
アパレルが好きで、自分のブランドを立ち上げたいと考える方は多いものの、いざ動こうとすると、何からはじめればよいのかわからず迷いやすいものです。市場リサーチやコンセプト作り、在庫管理や費用、集客のリスクなど、検討すべきポイントは少なくありません。
この記事では、アパレルブランド立ち上げの流れをステップごとに整理し、注意点やリスク、利益率についての考え方までをわかりやすく紹介します。
目次
アパレルブランドの立ち上げ方

アパレルブランドの立ち上げ期は、順序立てて進めることでリスクを抑えやすくなります。
まずは、市場リサーチから販売戦略までの流れを八つのステップに分けて解説します。
アパレルブランドの立ち上げ方①:市場リサーチ
まずは、幅広いファッション市場の中で「誰に」「何を」「いくらで」売るのかという軸を明確にしましょう。トレンドだけでなく、継続的に売れ続けているジャンルを把握することで、長く支持されるカテゴリを見極めます。
価格帯や世界観が近いブランドのラインナップや打ち出し方を分析し、激しい競争にさらされていない「勝てるポジション」を見つけるのが重要です。InstagramやZOZOTOWN、SHEINで売れ筋やビジュアル、レビューの内容を確認すると、競争が激しいゾーンと、まだ余白があるゾーンが見えてきます。
アパレルブランドの立ち上げ方②:ブランドコンセプトの確立
市場の中で立ち位置が見えてきたら、次はブランドのコンセプトを固めます。ここでいうコンセプトとは、ブランドの存在理由と視点を一言で説明できるレベルまで言語化したものです。
ターゲットの年齢や体型、仕事やライフスタイルを具体的に想像し、その人が服に何を求めているのかを整理しましょう。スタイルアップやラクさ、上品さなど、着ることで得られる価値をはっきりさせることが大切です。その上で、ブランド名や世界観、カラー基調をそろえ、どの服を作ってもぶれないコンセプトの軸を決めておきます。
最終的には、「このターゲットの、このシーン向けに、こういうテイストの服を、どのくらいの価格で提供するのか」というレベルまで落とし込むことが重要です。ここでの解像度が高いほど、以降の商品開発でも軸がぶれにくくなります。
アパレルブランドの立ち上げ方③:商品企画
コンセプトが固まったら、具体的な商品企画に進みます。ここで大事なのは、最初から多くを展開せず、3〜5型程度に絞ること。その中で、最もブランドらしさを現す看板アイテムを一つ決めましょう。
看板アイテムは、ブランドの世界観や価値を最もわかりやすく体現する商品です。生地、縫製、パターンでブランドらしさをしっかり作り込みます。トレンドに寄せすぎるのではなく、「毎日着たいかどうか」を基準に企画しましょう。同時に、原価率、利益率、ロット数を現実的に設計することも欠かせません。
カラーバリエーションやサイズ展開は、最初は小さくはじめるのが現実的です。売れ筋が見えてきた段階で、追加生産や拡張を検討した方が、在庫リスクを抑えやすくなります。
アパレルブランドの立ち上げ方④:OEM/工場探し
企画が固まったら、実際に形にしてくれるOEMや縫製工場を探します。立ち上げ期は、小ロットに対応してくれるOEMや工場を優先して検討した方が、在庫リスクを抑えやすくなります。
ラフデザインから仕様書を作り、サンプル制作、修正を経て最終サンプルに仕上げるのが基本的な流れです。
工場を選ぶ際は、生地提案や縫製技術が自分たちの目指すクオリティと合っているかを細かく確認します。納期や最低ロット、価格、品質基準は必ず書面で明確にしておきましょう。品質の妥協はブランド崩壊につながるため、必ず細部まですり合わせておく必要があります。
アパレルブランドの立ち上げ方⑤:ブランド名・ロゴ・商標
ブランド名は、世界観とターゲットに合い、読みやすく覚えやすいことが重要です。また、ロゴはシンプルで映えるデザインを意識します。ブランドタグやECサイト、SNSなどさまざまな場所で使われることを想定した、一目でわかるデザインが理想です。
商標は、重複トラブルを避けるため、他で使われていないかを必ず事前にチェックしましょう。Instagramや各種SNS、ドメイン検索などで同名の商品やブランドがないかを確認しておくと安心です。
ネーミングからロゴ、カラーまで一貫性を持たせることで、ブランドとしての印象が強くなります。
アパレルブランドの立ち上げ方⑥:撮影・ビジュアル作成
オンライン販売では、写真や動画が商品の印象に直結します。商品単体、モデル着用、生活シーンでの着用カットなど複数の画像を用意し、服の質感やシルエットが正しく伝わる構図を意識しましょう。
撮影場所や背景色、光の雰囲気は、ブランドの世界観に合わせることが大切です。とくにメイン画像の印象は強く、そのままクリック率や売上につながります。構図やクオリティにはしっかり時間をかける価値があると理解しておきましょう。
また、モデル選びはブランドの印象を大きく左右します。ターゲット層に近いイメージのモデルを起用すると、着用した自分を想像してもらいやすくなります。
アパレルブランドの立ち上げ方⑦:販売チャネルの構築
販売チャネルは、まずは「SNSからECまでの導線」をシンプルに設計しましょう。イージーマイショップやShopify、BASEなどを使えば、比較的少ないコストでECサイトを立ち上げられます。
集客の主軸としては、Instagramで「毎日着たくなる服」のコーデや着こなしを継続的に発信するケースが多く見られます。シルエットや動きを伝えたい場合は、TikTokで動画コンテンツを組み合わせ、バズを狙うのも有効です。
まずは、SNSのプロフィールや投稿からECへのリンクを明確にし、購入までの流れを最短にすることを目指しましょう。
アパレルブランドの立ち上げ方⑧:販売戦略(ローンチ設計)
最後に、立ち上げ時の販売戦略を設計しましょう。 発売日や予約開始日をあらかじめ決め、情報公開を段階的に行うことで、フォロワーの期待値を高められます。信頼感と話題性を高めるため、発売前にインフルエンサーやモデルの着用写真を公開するのも効果的です。
初回はあえて小ロットで生産し、売り切れやすい数量でスタートすることで、余剰在庫を避けつつ、次の仕入れや再販に向けた手応えをつかむことができます。
ローンチ後は、ストーリーズなどで在庫状況や人気アイテムをこまめに伝え、「今買う理由」が伝わるように工夫しましょう。
アパレルブランドを立ち上げるメリット・デメリット・リスク

アパレルブランドの立ち上げには、在庫や費用といったリスクがある一方で、大きなメリットも存在します。メリット・デメリットをそれぞれ整理していきましょう。
メリット
自分の世界観・価値観をカタチにできる
デザインや色、素材の選択など、自分の美意識をそのまま服という形に落とし込めるのが、アパレルブランドの大きな魅力です。
価値観を表現する作品としてコレクションを作り上げ、世界観を発信し続けていけば、共感してくれるファンは少しずつ増えていくでしょう。
収益性が高く、利益率をコントロールできる
アパレルは原価率を30〜50%程度に設計できることが多く、売価と原価のバランスを戦略的に組み立てやすいジャンルです。
小ロット生産でも価格設定次第で十分な利益を確保できますし、高付加価値の商品であれば、さらに高い利益率を狙うことも可能です。ロゴ入りのアイテムやアクセサリーなどは、ブランド力がそのまま価格に反映されやすく、利益率の底上げにもつながります。
また、利益率は下がりますが無在庫販売で展開するショップも近年増えてきています。アパレル特有のサイズ・カラーのバリエーション数分の在庫を常に確保するとなると、比例して在庫リスクも高まります。
リスクを抑えつつショップを展開したい場合には、選択肢として検討してみるのもよいでしょう。
SNSで売りやすく、広告費が低予算でも伸ばせる可能性がある
アパレルは写真や動画と相性がよいため、SNSで集客しやすいジャンルです。大規模な広告費をかけなくても、売上が作りやすいといえるでしょう。
たとえば、Instagramで世界観やスタイリングを継続的に発信するだけでも、一定の集客が期待できます。TikTokなどでは動きやシルエットが伝わることで拡散されるケースもありますし、ファンが自発的に着画を投稿してくれれば、口コミ的に売上が広がっていく可能性も見込めます。
個人でもブランドを作りやすい時代になった
近年は小ロット対応のOEMや縫製工場が増えたことで、以前より少ない数量から生産をスタートしやすくなりました。加えて、BASEやイージーマイショップ、Shopifyといった無料~少額ではじめられるサービスにより、ECサイトの構築コストも下がっています。
デザインや撮影も、必要に応じてクラウドソーシングで外注できるため、企画から販売までを個人や少人数で完結させることも現実的です。こうした環境変化により、ブランド立ち上げのハードルが昔に比べて大きく下がっているのも大きなメリットです。
自分が着たい服を自分で作れる
こだわりの素材やシルエットの服を作れるのが、自分のブランドをもつ一番のメリットと感じる人もいるでしょう。市販品の服が「いまひとつ好みに刺さらない」と悩む人にとって、自分が本当に着たい服を作れるのは大きなモチベーションになります。
こだわりを実現したアイテムを継続的にリリースすれば、同じ価値観をもつ人が自然と集まってきます。
商品ラインナップを広げやすい
ブランドの世界観とターゲットが一度、定まれば、主力以外の商品にも展開しやすくなります。たとえば、主力がトップスならボトムスやアウター、小物といったようにラインナップを広げていくと、継続的に新作を出しやすくユーザーを飽きさせない運営が可能です。
コーディネート提案を通じてまとめ買いにつなげるといった戦略も取りやすくなりますし、新作投入の過程で原価バランスを調整すれば、全体の利益率向上も狙えます。
デメリット・リスク
アパレルブランドはメリットが大きい一方で、他ジャンルのECにはない負担を抱えるリスクもあります。事前にどのような点で引っかかりやすいかを理解しておきましょう。
返品対応が発生しやすい
アパレルは返品や交換が発生しやすい商材です。
不良品だけでなく、サイズ違いやイメージ違い、写真と実物の色味の差、着用してみた結果の「なんとなく微妙」という感覚などが返品の原因になることもあります。
誤認による返品対応を減らすには、オンライン販売時はできるだけ多くの商品画像を掲載し、ディテールや実際の着用イメージを具体的に伝えることが有効です。
在庫リスクが発生する
アパレルの製造時は、最低ロットを満たすためにまとまった在庫を抱える必要があります。在庫が増えるほどキャッシュが拘束される点に注意が必要です。
サイズやカラーによって人気に偏りがでることも多く、特定のバリエーションのみ売れ残ることも珍しくありません。アパレルはシーズンが変わると価値が下がってしまうため、値引きせざるを得ない場面も出てきます。
キャッシュフローの最適化と業務効率化のため、在庫(SKU)管理はなるべく専用のシステムを活用し、自動化しておくことをおすすめします。
初期費用がかかる
アパレルブランドの立ち上げ時には、型数ごとのサンプル代(1〜5万円程度×型数)や、ロット生産費(規模によって数万円〜数十万円)、撮影費(外注すれば数万円〜)といったコストがまとまって発生します。
加えて、Shopifyなどの有料テーマを使ったEC構築費や、広告・インフルエンサー起用などのプロモーション費も考慮すべきです。
これらの初期費用についても、事前に確認しておきましょう。
SNS運用が苦手な場合は集客が難しい
現在のアパレルD2Cでは、InstagramやTikTokを軸にファンを増やしていくモデルが一般的です。しかし、アカウントを成長させるには時間がかかりますし、そもそもの世界観が弱ければファンは簡単にはついてくれません。バズらなければ売上の初動が伸びにくいという課題もあります。
また、フォロワーが増えても購買に結びつかないケースも珍しくありません。そのうえ更新を怠ると目に見えて売上が落ち込むため、継続的に運用できる体制を考えておく必要があります。
商品開発に時間と手間がかかる
生地選びからパターン・サイズ調整、サンプルの作り直しなど、商品開発には想像以上に時間と手間がかかります。小さなデザイン変更でも費用がかさむことが多く、思い描いたシルエットになるまでに何度も試行錯誤が必要になるケースもあります。
また、費用だけでなく開発期間にも注意が必要です。シーズンに間に合わせるためには、企画から量産まで、少なくとも1〜3か月程度はスケジュールを見積もっておくべきです。
トレンド変化のスピードが速い
ファッションの移り変わりは速く、トレンドの過ぎた商品は売上が大きく落ち込みます。商品を量産した頃には旬が過ぎてしまっているリスクを考慮しておきましょう。
ロングセラーの定番商品を育てるまでには時間がかかるため、基本的には短期的なトレンドを見据えて在庫管理をしていく必要があります。
とくに季節の変化がはっきりしている日本では、売り切れなかった商品の扱いが課題になりやすいため、シーズンごとの在庫計画と値下げのルールをあらかじめ決めておくことが重要です。
アパレルブランドは儲かるの?利益率・成功率について

引用元:https://www.photo-ac.com/main/detail/26659998
アパレルブランドはうまく軌道に乗れば大きく儲かる一方で、成功率は高くありません。在庫や集客に失敗すると資金を一気に失いやすいビジネスでもあります。
利益率は高いが在庫リスクも高い「ハイリスク・ハイリターン型」といえるでしょう。
ここでは小規模D2Cブランドを例に、利益率と成功した場合の規模感、そして成功率のイメージを整理していきます。
アパレルブランドの利益率
小規模D2Cブランドの平均
小規模なD2Cアパレルでは、原価率をおおよそ25〜50%、粗利率を50〜75%程度に設計するケースが一般的です。
ここからEC手数料や発送費として10〜20%前後、広告費として0〜10%程度を差し引くと、最終的な営業利益率は10〜30%前後に落ち着きやすいと考えられます。
商品の利益率例
例として1万円のワンピースを想定してみましょう。
原価率を30%、発送費や手数料を10%前後、広告費を5%として計算すると、
原価:3,000円
発送費・手数料:1,000円
広告費:500円
となり、合計4,500円になります。
この場合、残る利益は5,500円で、利益率は55%という計算になります。
成功すればどれくらい儲かる?
| ブランド規模 | 月商目安 | 利益目安 |
|---|---|---|
| 小規模アパレルブランド(個人) | 100〜500万円 | 10~100万円 |
| 中規模アパレルブランド | 500~2000万円 | 50~400万円 |
| 大規模アパレルブランド | 2000万円以上 | 500万円以上 |
| それ以上 | 数億〜 | 数千万円〜 |
個人事業の小規模アパレルブランドの場合、月商が100〜500万円であれば、利益はおおよそ10〜100万円程度が目安になります。
中規模ブランドで月商500〜2,000万円規模になると、利益は50〜400万円程度、大規模ブランドで月商2,000万円以上ともなれば、500万円以上の利益を狙えるケースも出てきます。さらにそれ以上の規模になれば、月商が数億円、利益も数千万円規模という世界も現実味を帯びてきます。
一方で、規模が大きくなるにつれ、広告費や人件費、固定費が増えるため、利益率そのものは5〜15%程度に落ち着きやすいといわれています。
参考:https://stock-sun.com/column/d2c-brand/
アパレルブランドの成功率
アパレルは参入しやすい反面、継続が難しい業種でもあります。
一般的なイメージとして、立ち上げから1年続くブランドは全体の10〜20%程度、3年以上続くブランドは5%未満ともいわれます。
継続が難しい主な理由は、売れ残り在庫による資金繰りの悪化や、集客の安定しづらさです。在庫のロットやSKU数を抑えつつ、1〜3年単位で資金計画と集客施策を続ける前提を持てるかどうかが、成功率を左右する大きなポイントになります。
アパレルブランドの立ち上げの際にもらえる補助金・助成金

全国共通の補助金・助成金
・小規模事業者持続化補助金
小規模D2Cと最も相性がよい、王道の補助金です。小規模事業者を対象に、販路開拓やプロモーション費用などを幅広く支援してくれます。
通常枠は上限50万円・補助率2/3、創業期には上限200万円・補助率2/3の「創業型」も選択可能で、事業状況にもよりますが、基本的にはECサイト制作や商品撮影、LP制作、パッケージやタグのデザイン費なども対象になります。
参考:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/shokibo/jizoku/
・IT導入補助金
IT導入補助金は、ECとバックオフィスの効率化を進めたいD2Cブランド向けの定番の補助金です。「インボイス枠」では、在庫・受注管理システム、会計ソフト、POSレジ、CRMなど、ITツールの導入費用の一部を補助してもらえます。
認定された「ITツール」の中から選ぶ必要がありますが、D2C運営でよく使われるSaaSがラインナップされていることも多く、在庫管理や受注処理の自動化といった業務効率化に活用しやすい制度です。
なお、ECサイト自体の構築費用は2024年より補助対象外となっている点に注意が必要です。
参考:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r7/r6_it_summary.pdf
東京のブランドなら申請できる補助金・助成金
・東京都創業助成金
東京都でアパレルD2Cブランドをはじめる場合に利用できるのが、東京都創業助成金です。アトリエ・ショップの賃料やスタッフの人件費、オンライン広告やフライヤーといった広告宣伝費など、創業初期にかかる費用を対象にできます。
条件が合えば、前述の補助金と組み合わせて、家賃・人件費を東京都創業助成金、クリエイティブや販促を小規模事業者持続化補助金、システム面をIT導入補助金といった形で役割分担することも可能です。
参考:https://www.tokyo-sogyo-net.metro.tokyo.lg.jp/finance/sogyo_josei.html
・若手デザイナー支援
「デザイナー主体のブランド」で、都内に在住・在勤・在学といった条件を満たす場合は、東京都の若手デザイナー支援策も候補になります。こちらは自分の名前や自分発のブランド名でコレクションを発表し、将来的に東京コレクションや海外展開も視野に入れているようなコンセプトと相性がよい補助金です。
奨励金だけでなく、グループ展やPR、専用の講義などの支援メニューがセットになっていることが多く、実績や信用を積み上げる意味でも活用価値があります。
参考:https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/chushou/shoko/keiei/fashion/ishiki_hanro












