
D2Cは、ブランドが卸や店舗を通さず、自社のオンラインショップなどで直接お客様に商品を販売するビジネスモデルのことです。
ECやマーケティングの現場で「D2C」について耳にする機会が増えましたが、自社ECと何が違うのかや、なぜ今これほど注目されているのか、よくわかっていない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、D2Cの定義とビジネスモデルを整理したうえで、従来のECとの違いやメリット・デメリット、日本の代表的な成功事例について詳しく解説します。
目次
D2Cとはなにか?

D2C(Direct to Consumer)は、メーカーやブランドが卸や小売店といった中間業者を通さず、自社で企画から製造、販売、顧客管理までを一気通貫で行うビジネスモデルです。
従来型の流通フローは「メーカー → 卸 → 小売店 → 消費者」と、いくつかのプレーヤーを挟むのが一般的でした。これに対してD2Cでは「メーカー → 消費者」と、中間をすべて飛ばし、ブランドとお客様が直接つながる形になります。
| 項目 | D2C | EC(一般) |
|---|---|---|
| 販売者 | メーカー自身 | さまざま(メーカー、小売、転売、卸など) |
| 流通 | 直販 | 中間あり |
| 目的 | ブランド構築/LTV最大化 | とにかく販売 |
| マーケティング | 世界観重視 | 商品検索・比較重視 |
一般的なECは、販売者がさまざまで、ブランドとしての魅力よりも価格やスペックで比較されることが多くなります。
D2Cでは、販売者は基本的に自社ブランドのみです。そのため、短期的な売上以上に、顧客との関係性が重要になります。商品の機能や価格だけでなく、「どんな世界観のブランドなのか」「どんな体験を提供しているのか」といったストーリーまで含め判断されるためです。
D2Cの市場規模・将来性

D2Cへの取り組みを考えるうえで、市場規模と将来性をおさえておくことは重要です。ここでは、日本と世界それぞれのD2Cの規模感と、今後の伸びしろについて整理します。
D2Cの市場規模
日本国内
日本のD2C市場は2020年代に入ってから拡大が続いています。
たとえば、ある調査では2015年時点で1兆3,300億円だった国内D2C市場は2020年には2兆2,200億円規模に達し、2025年には約3兆円へと成長すると予測されています。
また、国内のBtoC-EC市場と比較すると、D2Cは物販BtoC-ECの 20〜25%程度を占める可能性があるという分析も示されており、物販系ECの中でも重要な規模に育ちつつある領域です。
参考:https://www.globalinsightservices.com/reports/d2c-direct-to-consumer-market/
国際市場
世界全体で見ても、D2Cは成長余地の大きい領域です。
海外の調査では、2024年時点で約2,255億ドルだったD2C市場が、2034年には約8,800億ドルへ拡大するという予測も出ています。
これは10年ほどのスパンでおよそ4倍まで成長する計算であり、年平均にすると10%台半ばの成長率です。小売ECの中でも成長領域の一つとして位置づけられつつあります。
参考:https://www.globalinsightservices.com/reports/d2c-direct-to-consumer-market/
D2Cの将来性
結論からいえば、D2Cの将来性は高いと考えられます。しかし、市場が伸びている一方、参入企業の増加や広告費の高騰などにより、勝ち残るためのハードルが上がっているのも現実です。「成長余地と難易度のどちらも高まっている」というのが実際の姿に近いでしょう。
将来性が高いとされる理由
D2Cの将来性が高いといわれる背景には、いくつかの要因があります。
- 拡大傾向にある市場
- チャネルの拡大
- プラットフォームの普及
まず、D2C市場は拡大傾向にあり、世界のD2C市場は今後10年で4倍の規模に拡大すると見込まれています。米国のD2C売上は2025年には約2,400億ドルに達し、EC市場全体の約20%を占めると予想されるほどです。
つづいて、SNS・ショート動画・ライブコマースの台頭により、ブランドが消費者と直接つながるチャネルが急拡大していることが挙げられます。加えて、Shopifyのようなコマースプラットフォームや、決済・物流などのSaaSが普及したことで、以前であれば大企業にしか難しかった直販モデルが、中小規模のブランドでも構築しやすくなっています。
D2Cのメリット・デメリット

つづいてD2Cのメリットとデメリットを整理します。
D2Cのメリット
中間マージンがなく、利益率が圧倒的に高い
2Cでは、卸や小売を介さずに自社商品を直接扱うため、中間マージンをかけずに販売できます。利益率はそのぶん高くなり、浮いた原資をプロダクト改善や広告、顧客体験の向上に再投資することも可能です。
顧客データ(購買・行動)がすべて自社に蓄積され、LTVを最大化できる
顧客データを自社で一元管理できるのがD2Cの大きな強みです。「誰が、いつ、どの商品を、どのチャネル経由で購入したのか」といったデータを蓄積できるので、これらを分析してマーケティング施策に活かせます。
たとえば、顧客の属性にわせてセグメント別の施策やアップセル・クロスセル施策などを取り入れれば、LTVを最大化できます。
ブランド世界観・訴求を100%自分でコントロールできる
D2Cでは顧客とブランドの接点をすべて自社で設計できるため、世界観やメッセージを一貫した形で伝えやすくなります。
モールのテンプレートや店舗の売り場事情に左右されにくく、「どんなブランドとして認識されたいか」を逆算して体験を組み立てられる点が特徴です。
顧客と直接つながるため、ファン化・リピーター育成がしやすい
顧客との距離感が近いのも、D2Cの利点のひとつです。 販売で直接やり取りをするため、フォローアップのメールやアプリ通知、SNSコミュニケーションなど、ブランドが顧客とやり取りできる接点を多く持てます。
商品そのものだけでなく、ストーリーや開発の裏側、他のユーザーの声を伝えることで、単発購入からファン・リピーターへと育てていきやすい構造です。
顧客の声を即時に商品開発・改善に反映でき、スピーディに成長できる
D2Cでは、レビューや問い合わせ内容、アンケート結果がタイムリーに自社に集まるため、顧客が現状何に満足していて、どこに不満があるのかをダイレクトに把握できます。
中間業者を挟まないぶん、企画・開発チームと顧客の距離が近く、仕様変更や新商品のテストも短いサイクルで回しやすいのが利点です。
D2Cのデメリット
新規顧客獲得コスト(広告費)が高騰している
D2Cブランドの認知拡大には、デジタル広告の活用が欠かせません。しかし近年はD2Cブランドの競争激化により、顧客獲得単価(CPA)が上がりやすい傾向にあります。同じターゲットを狙う競合ブランドが増えたことで、広告のクリック単価やコンバージョン単価が数年前の2〜3倍になっているケースも珍しくありません。
短期的な売上を追うだけでは、広告コストがLTVを上回りやすくなってしまいます。低コストなSNS運用やUGC施策などを効果的に組みあわせる必要があります。
世界観・ブランド体験を自社で作りつづける負荷が大きい
D2Cはブランドの世界観やストーリーが重要になるぶん、コンテンツやクリエイティブを継続的に生み出しつづける必要があります。
こうした業務を担当者個人のセンスや情熱だけに依存すると、早期に疲弊してしまいます。担当者が休んだり退職したりした場合に、ブランドの発信が止まってしまうリスクも見過ごせません。 そのため、ブランドガイドラインや制作フローを整備し、仕組み化しておくことが重要です。また、外部のクリエイターやデザイナーと連携し、内製の負荷と属人化を避ける方法も効果的です。
在庫・生産・物流を自社で管理する必要があり、運営リスクが重い
D2Cでは、商品の企画から販売まですべてを自社でコントロールできる一方で、在庫管理・生産管理といった物流全体の責任も自社で負うことになります。
売れ行きの読み違いによる在庫過多や欠品、物流トラブルはそのままブランド毀損につながるため、サプライチェーン全体を見据えた体制づくりが欠かせません。
リスクを最小化するためにも、データにもとづく需要予測や信頼できるパートナー選定、柔軟な在庫調整の仕組みづくりは不可欠です。
リピートを生むCRM設計が難しく、LTVが伸びないと事業が成立しない
D2Cでは新規顧客の獲得コストが高いため、一度購入してくれた顧客にリピートしてもらうことが収益の鍵となります。しかし、顧客との関係を深め、継続的な購入を促すCRM設計は簡単ではありません。
購入後のフォローアップや定期購入・サブスクの設計、会員ランクやポイントといったロイヤルティ施策など、長期的に顧客を留められるような施策を行う必要があります。
ただし、これらの施策を場当たり的に実施するだけでは効果は限定的です。LTVを向上させるには、CRMツールやMAツールを活用し、顧客にあわせた最適なアプローチを設計する必要があります。
同業D2Cブランドが急増し、差別化が難しく競争が激しい
ECプラットフォームの普及やOEM生産の利用しやすさから、D2C立ち上げのハードルが下がっています。そのため新しいD2Cブランドが次々と立ち上がり、市場は飽和している状態です。
とくにアパレル、コスメ、食品といった人気カテゴリでは、似たようなコンセプトやデザインの商品が溢れ、機能やデザインだけで差別化するのは難しくなっています。 こうした環境では、「何を売るか」以上に「誰にどんな価値を届けるか」が重要になります。
人気カテゴリに関しては成功すれば利益率が高い傾向にありますが、その分、ブランドの価値を明確にしなければ価格競争に巻き込まれやすくなり、疲弊しやすくなってしまいます。
D2Cとその他モデルとの違い

D2CはECの一形態ではありますが、「誰が誰に売るのか」という観点で見ると、他のECモデルとは性質が大きく異なります。ここでは、代表的な4つのモデルと比較して整理します。
| モデル | 誰 → 誰へ? | 主な例 | 中間業者 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| D2C | メーカー → 消費者 | 北欧、暮らしの道具店 / BASE FOOD / FABRIC TOKYO / BOTANIST | なし | 直販・データ活用・世界観重視 |
| B2C | 企業 → 消費者 | 家電量販店、ユニクロ、ZOZOTOWN内ショップ | あり / なし | 最も一般的な小売・サービス |
| B2B | 企業 → 企業 | 原材料メーカー、法人向けSaaS(freee、弥生会計) | あり | 単価高・長期契約・営業中心 |
| C2C | 消費者 ↔ 消費者 | メルカリ、ヤフオク、minne | プラットフォームが仲介 | 個人間取引(中古・ハンドメイド中心) |
D2C(Direct to Consumer)
メーカーが卸や小売を介さず、自社ECなどで直接消費者に販売するモデルです。デザインや世界観・ユーザー体験・価格などを自社で一貫管理でき、顧客データも自社に蓄積できます。一方、集客・在庫・ブランド構築のすべてを自社で担う必要があります。
B2C(Business to Consumer)
企業が一般消費者に販売する、最もベーシックなモデルです。自社ブランドに限らず、複数メーカーの商品を扱うケースも多く、中間業者が介在するかは業態次第です。
「顧客データやブランド体験の主導権をどこまで握っているか」がD2Cとの違いになります。
B2B(Business to Business)
企業同士の取引モデルです。原材料供給や法人向けSaaSなどが代表例で、取引単価が高く契約期間も長期になりやすいのが特徴です。複数の意思決定者が関わるため、営業やカスタマーサクセスが重要になります。
C2C(Consumer to Consumer)
消費者同士がプラットフォームを介して売買するモデルです。メルカリやヤフオクなどが代表的で、中古品やハンドメイド作品など、従来の小売では扱いにくい商材が流通します。品質や継続性は出品者ごとにばらつきがあります。
D2Cブランドの成功事例
さいごに、日本発の代表的なD2Cブランド事例を紹介します。
BASE FOOD(ベースフード)

BASE FOODは完全栄養食を販売するフードテック系D2Cブランドです。パンやパスタなど、日常的に食べる“主食”を対象に、自社ECと定期配送(サブスク)を組みあわせたモデルで展開しています。
ポイントは、「主食×定期購入」という設計でリピートを生み、高いLTVを実現していること。「完全栄養の主食」という新しいカテゴリを打ち出しつつ、コミュニティやSNSでユーザーの声を集め、商品改善に反映させてきました。
サブスクの利用データをもとに継続率や商品構成を最適化する、データドリブンなD2Cを行っている企業です。
北欧、暮らしの道具店

引用元:https://hokuohkurashi.com/
北欧、暮らしの道具店は、北欧テイストの雑貨・アパレル・食品などを扱うライフスタイル系D2Cブランドです。
世界観そのものがブランド資産として確立しているため、リピート率やロイヤルティが高く、収益性の高い構造を築いています。広告に大きく依存せず、コラムやドラマ、映画などのコンテンツを通じてファンベースで成長してきた点が特徴的です。
自社メディアやSNS、アプリといった自前チャネルに集中的に投資し、そこで培ったコンテンツ制作ノウハウを他社支援にも展開している点も、D2Cとコンテンツビジネスを掛け合わせたモデルとして参考になります。
グリーンパンジャパン

グリーンパンジャパンは、PFASフリーのセラミックフライパンを展開する日本のD2Cブランドです。公式オンラインストアでは、シリーズやサイズ別にラインナップを整理し、比較記事や寿命検証といったコンテンツを充実させています。公式ECをユーザーの疑問に答えるハブとして位置づけて不安を解消しつつ、レビュー評価の高さを前面に打ち出すことで、購入を後押ししています。
PFASフリーというコンセプトを起点に、自社コンテンツを組みあわせて信頼を積み上げているD2C事例です。
ALLNA ORGANIC(オルナオーガニック)

ALLNA ORGANICは、オーガニック系のヘアケア・スキンケア商品を展開するブランドです。ECモールと自社サイトを組みあわせたオンライン特化型で、Amazonのヘアケアカテゴリでは、大手ブランドを上回る売上実績を持っています。
戦略の軸は、まずモールで徹底的に売り切る「モール起点D2C」モデルです。EC上のレビューや検索データを起点に、成分や香り、使用感をストーリーとして整理し、体験価値として訴求しています。そこから得られたインサイトをもとに派生商品や新ブランドを開発することで、D2Cポートフォリオ全体を広げている企業です。
北の快適工房

引用元:https://www.kaitekikobo.jp/
北の快適工房は、D2Cとサブスクの成功例としてしばしば取り上げられる、健康食品や化粧品を自社開発・販売するD2Cブランドです。単品通販と定期購入モデルの組み合わせを主軸に少数の主力商材に集中し、年商100億円超・高利益率のビジネスを実現している点が特徴です。
その背景には、単品通販での初回購入から複数の定期コースへつなげ、LTVを最大化する設計があります。さらに、ニュースレターやコラムといったコンテンツで顧客との関係性を強化している点も、ユーザー目線を意識したD2Cらしい運営スタイルと言えるでしょう。










