
ECサイトを運営していると、「SNSを更新しても売上が伸びない」「広告を出しても成果が見えない」といった悩みに直面することは少なくありません。とくに、初めてネットショップを立ち上げた人にとっては、「せっかく開設したのに誰も来てくれない」という状況は大きな不安につながります。
こうした悩みの多くは、「集客=施策の数を増やすこと」と思い込んでしまうことが原因です。SNS投稿や広告出稿といった手段を単発で増やしても、売上には直結しません。
成果を出しているECサイトは「お客様が迷わず購入までたどり着ける導線」を丁寧に設計しています。
この記事では、単発の施策の寄せ集めではなく、売上に直結する“全体の導線設計”の視点から、ECサイト集客を解説していきます。
目次
ECサイト集客の戦略について

引用元: https://unsplash.com/ja/%E5%86%99%E7%9C%9F/person-using-a-laptop-4Hg8LH9Hoxc
「SNSを毎日更新してもなかなか売上につながらない」「広告を出してもユーザーの反応が薄い」など、多くのECサイト運営者が抱える悩みには、単発の施策を積み重ねているだけで“全体の設計”ができていないという共通点があります。
集客施策は、あくまで全体の入口にすぎません。やみくもに手段を増やすのではなく、「誰(ターゲット)」に「何(提供価値)」を届けたいのかを明確にし、それぞれの施策を連携させることが不可欠です。
ターゲットと提供価値を定義した上で、SNSや広告、SEOなどの集客手段を「一本の流れ」として設計していくことが集客の成功につながります。
1. ターゲットを具体化する
ターゲットが曖昧なままでは、広告の打ち方やSNSの発信内容がブレてしまい、ユーザーの心に刺さりません。個人レベルまで落とし込んだ具体的なターゲット像を描くことで、施策全体の一貫性が生まれます。
例えば「30代女性」という大まかなくくりではなく、「35歳、仕事と育児を両立する共働きママ、扶養内で平日夕方まで働いていて…」のように、ライフスタイルや価値観まで細かく掘り下げてペルソナを設定することが重要です。
2. “商品価値”ではなく“提供価値”を考える
商品を紹介するときは、特徴そのものを伝えるだけではなく、それを使うことで得られる未来 = ”ユーザーにとっての利益” を明確に伝えることが大切です。
「軽いバッグ」という説明よりも、「子どもとの外出がラクになるバッグです」と伝えることで、ユーザーは自分の生活に結びつけて使用シーンをイメージできます。提供価値が明確であれば、広告文やLP、Instagram投稿、ブログ記事まで一貫性を持たせることができ、訴求効率が格段に高まります。
3. 集客施策は一本の流れで設計する
SNS、SEO、広告といった集客チャネルは、単体で機能させるのではなく「購入までの導線」としてスムーズにつなぐ必要があります。
たとえば、Instagramであれば訪問ユーザーが商品LPにスムーズに遷移し、商品をカートに入れ、決済まで進む。この一連の流れが設計されていなければ、せっかくのユーザー流入も売上につながりません。
成果を出すECサイトは例外なくこの「全体設計」を持ち、施策の量よりも導線の質にこだわっています。
【すぐ実践できる】即効性のあるECサイト集客施策

「売上をすぐに立てたい」「とにかく人を集めたい」場面では、短期間で効果を出せる施策が有効です。ただし、集客の入口をつくるだけでは不十分で、その後の導線につなげることが成果の分かれ目になります。
ここでは、即効性が高く導線設計とも相性の良い施策を紹介します。
たとえば、リスティング広告やSNS広告は「新規流入の入口」として強い導線です。ただし、それだけでは売上への導線は安定しません。商品LPの最適化やインフルエンサー施策、外部モールとの連携などを多角的に組み合わせることで、集客の広がりと購入への導線が有機的につながります。短期的な効果を求める場面だからこそ、各施策を点ではなく線として設計する視点が欠かせません。
1. リスティング広告(Google・Yahoo!)
検索キーワードに連動して広告を表示できるリスティング広告は、顕在層にアプローチする最短ルートです。購入意欲のあるユーザーに直接訴求できるため、成果につながりやすい施策です。
一方で、費用設計や運用知識が不足しているとコストが膨らむリスクもあります。小規模からテストを行い、キーワードや広告文を改善しながら最適化する必要があります。
2. SNS広告(Instagram、Facebook、Xなど)
潜在層や新しい顧客層を広げる手段として、SNS広告は有効です。とくに、選ぶSNSによってビジュアルや動画と相性が良く、ブランドの世界観や商品の魅力を直感的に伝えることができます。
ただし、成果を安定させるにはターゲティングの精度が重要です。年齢や興味関心だけでなく、購入につながりやすい層を見極め改善していくことが求められます。
3. 商品LP(ランディングページ)の最適化
せっかくの流入があっても、LPが整っていなければ購入にはつながりません。広告クリエイティブとの親和性、ファーストビューの訴求、情報の過不足、購入ボタンの位置などは、ユーザーの行動を大きく左右します。
「買いたい」と思わせる構成と、「購入操作のしやすさ」が両立できているかを見直し、デザインを整理することが重要です。とくに、スマホユーザーを意識した設計は必須です。
4. インフルエンサー・口コミ施策(UGC)
信頼を短期間で得るには、第三者の声を活用するのが効果的です。影響力のあるインフルエンサーの発信や、自然発生的な口コミ(UGC)は、ブランドの信用度を高めてくれます。
ただし、インフルエンサーへの依頼をフォロワー数だけで判断するのは危険です。実際にファンとの関係性を築けているかどうかを基準に選定することがポイントです。また、プレゼントキャンペーンを乱発するだけでは効果は薄いことにも注意しましょう。継続的な関係の中で紹介してもらう仕組みづくりが大切です。
外部モール活用
楽天やYahoo!ショッピングといったモールは、自社サイトより圧倒的に強い集客力を持っています。これらを「入口」として利用し、獲得した顧客を自社サイトへ導く流れを作れると強力です。
ECサイト構築サービスの中には、有名モールとの連携に加えて、独自のモールや集客支援サービスを展開しているケースもあります。
たとえば「創作品モールあるる」では、ハンドメイド作家の商品を集めた独自モールを通じて新規顧客との接点を広げていますし、BASEが運営する「PayID」も購入者との継続的な関係構築を支援しています。
モールと自社サイトを併用する際には、ページ内リンクや同梱物を通じて自然に自社サイトを知ってもらう導線を設計しましょう。これにより、モール集客を一過性で終わらせず、長期的な資産に変えていくことが可能になります。
【資産型マーケティング】中長期で効果を発揮する集客施策

即効性のある施策だけでは、一時的な購入者は増えても長期的に安定した売上をつくることは難しいです。持続的に顧客が集まり、繰り返し購入してくれる仕組みを整えることが、ECサイト運営における重要な課題です。
そのためには、瞬間的な効果の高い広告に依存するのではなく、「資産」として積み上がるマーケティング施策に取り組む必要があります。ここでは、代表的な3つのアプローチを紹介します。
1. SEO対策(検索流入の安定化)
SEO(検索エンジン最適化)は短期的には結果が出にくいものの、中長期で安定した集客をめざすために不可欠な施策です。商品ページやカテゴリページに適切なキーワードを設計し、ユーザーの検索意図に沿った構成を整えることで、広告にたよらない検索エンジンからの流入を生み出せます。
また、レビューやQ&Aといったユーザー生成コンテンツを補強することで、検索エンジンからの評価が高まり、信頼性が向上します。SEOは一度整備すると資産として残るため、早い段階から計画的に取り組む価値がある施策です。
2. コンテンツマーケティング・ブログ運用
顧客が商品購入前に調べる悩みや情報ニーズに応える記事は、集客を増やすだけでなく信頼性を高め、サイトの資産になります。たとえば「商品の選び方」「サイズ感の目安」「お手入れ方法」などの情報は、直接の販売訴求ではなくても検索されやすく、長期的に検索からのユーザー流入をもたらします。
こうした記事は、単にアクセスを集めるだけでなく、ブランドへの信頼や専門性のアピールにつながります。購買導線と連動させることで、認知から購入まで自然な流れを作り出せる点も大きなメリットです。
3. メルマガ・LINE公式での継続接点づくり
一度購入してくれた顧客をリピーターに育てることは、新規顧客獲得以上に重要です。メルマガやLINE公式アカウントを活用して定期的にコンタクトをとることで、顧客の再訪問や再購入の導線を強化できます。
効率的なメルマガ運用のためには、配信内容だけでなく「メール到達率」にも注目することが欠かせません。迷惑メールフォルダに入ってしまえば、どんなに良い内容でも届かないため、配信サービスの選定や運用方法を工夫する必要があります。
また、配信する内容も単なるセール告知に終始しないことが大切です。魅力的な購入者のレビュー紹介や商品の活用方法、ストーリー性のあるコンテンツを配信することで、顧客の「ファン化」を促進し、長期的な関係性を築くことができます。
そもそも、ECサイトはどれくらいの集客数が必要?

「どれくらいの人を集めれば売上目標を達成できるのか分からない」という悩みは、運営者の多くが抱えています。施策を考える前に必要なのは、事前に数値を設計することです。理論的に集客数を明確にすると、目標に向けた優先順位が見えやすくなります。
基本の計算式は以下の通りです。
集客目標 = 売上目標 ÷ CVR(コンバージョン率) ÷ 平均客単価
数値で逆算すると「あと何人の来訪者が必要か」が具体化され、打つべき施策が選びやすくなります。
売上目標100万円の場合
平均客単価が5,000円、CVRが2%の場合、
集客目標 = 1,000,000 ÷ 0.02 ÷ 5000 =10,000
の計算で、必要なアクセス数はおよそ10,000PVとなります。
この規模の目標であれば、リスティング広告やSNS広告を組み合わせて短期間で流入を作りつつ、SEOやブログ記事で中長期的なアクセスを積み重ねる戦略が効果的です。
売上目標1000万円の場合
同じ条件(平均客単価5,000円、CVR2%)で月商1,000万円を目指す場合、必要なアクセス数はおよそ100,000PVに上がります。
この規模になると、広告だけでまかなうのは費用面で非現実的なため、SEOによる検索流入やメルマガ・LINEを活用したリピート戦略が不可欠になります。施策をどの比率で組み合わせるかを計画的に検討することが求められます。
集客が成功しているECサイト事例

ここでは、実際に成果を出しているECサイトの事例をご紹介します。今回紹介する3つのサイトは、それぞれ異なる手法で集客を成功させているのが特徴です。それぞれのサイトの強みは違いますが、「導線設計」に力を入れている点に共通点があります。
北菓楼(きたかろう)

北海道の菓子メーカー「北菓楼」は、検索からの回遊導線を徹底的に設計しています。
SEOを基盤に、動画コンテンツやギフト特化ページを組み合わせることで、幅広いキーワードからロングテールの流入を獲得し、検索で訪れたユーザーが関連ページを回遊しやすい仕組みを整えた結果、安定した集客を実現しています。
ChooMia(チュミア)

アクセサリーブランドの「ChooMia」は、SNSとSEOの両輪を活用した導線設計が特徴です。
SNSと相性の良いアクセサリーの写真や着用画像を多く使ったビジュアル訴求による認知拡大と、検索経由での安定的な流入を組み合わせ、双方のチャネルを連携させています。これにより、新規顧客獲得と継続的な購入の両立に成功しています。
東洋館出版社

引用元:https://www.toyokan.co.jp/
教育関連の出版を手掛ける「東洋館出版社」は、LINE公式アカウントを軸にした教育型マーケティングで成果を出しています。単なるセール告知ではなく、学習に役立つ情報を継続的に配信することで、LINE登録者との信頼関係を構築しているのが特徴です。
ユーザーにとって魅力的な情報を中心にした施策でLINE登録者経由のコンバージョン率が大幅に向上し、安定した集客・販売につながっています。







