
バックオーダーとは、ECショップなどで商品の在庫が0になっても販売を続ける仕組みのこと。販売を止めないことで、顧客離脱や売上の機会損失を防ぐ効果が期待できます。
しかし、運営の手間が増えたり顧客からの信用に関わったりするなどデメリットも存在します。
この記事では、バックオーダーの仕組みや発生する理由、戦略的に行う際のメリット・デメリットについてわかりやすく解説します。バックオーダーについて正しく理解し、戦略的に導入することで、機会損失を減らし売上の最大化につなげましょう。
目次
バックオーダーとはなにか?

バックオーダーは簡単にいうと、在庫のない商品の注文を受け付け、入荷次第発送する仕組みのことです。入荷待ちの商品そのものを指す場合もあります。予約販売と混同されがちですが、厳密には下記のような違いがあります。
【予約販売】
- 発売前の商品を受注する
- 新発売や再販など、明確な「発売日」に向けて受注する
【バックオーダー】
- 在庫切れの商品の「補充」に向けて受注する
- 入荷の正確な日程が確定していない(入荷次第の発送となる)場合が多い
予期せぬバックオーダーが発生する場合と、戦略的にバックオーダーを取り入れる場合があります。バックオーダーを行うことで、在庫不足による機会損失を防ぐ効果が期待でき、売上に大きく関わることもあります。バックオーダーには、メリット・デメリットがあるため、正しく理解した上で導入を検討しましょう。
① 在庫がないのに「販売を止めない」運用
バックオーダーは、在庫がないのに販売を止めない運用を行うことです。通常は、在庫が0になると販売停止となります。しかし、在庫が0でも注文を受け付け、入荷次第発送する状態がバックオーダーです。
主に「在庫不足による機会損失を避ける」「オーダー数分の在庫を発注し、売れ残りのリスクを抑える」ために運用するケースが多いです。
② 未来の入荷(補充)を前提として注文を確保する
バックオーダーは、未来の入荷(補充)を前提として注文を確保します。次回の生産予定や入荷予定日が決まっている商品、いわゆる「未来の在庫」に向けて受注を取る仕組みです。
しかし、入荷予定のない商品の受注を行ってしまうと、以下のようなリスクがあります。
- いつまで経っても顧客の元に商品を届けられない
- お断りの連絡を入れざるを得ない
リスクも考慮した上で、計画的にバックオーダーを行う必要があるでしょう。
バックオーダーはなぜ発生するのか?

バックオーダーは、さまざまな理由により発生します。主な理由としては、需要と供給のギャップが生じたときが挙げられます。生産数に対して購入希望が過大となり、供給が追いつかない場合などです。
なぜバックオーダーが発生するのかを理解しておくことで、予期せぬバックオーダーを未然に防ぎ、逆に戦略的に活用することも可能です。
① 需要側の理由
需要側の理由でバックオーダーが発生する例には、外部要因が多く挙げられます。たとえば、SNSで紹介されて一時的に人気が上昇したり、季節要因で急に需要が増えたりする場合などです。その結果、予想以上に商品が売れて在庫が追いつかなくなり、バックオーダーが発生します。
他には、競合が欠品することで代替品として需要が急増する場合もバックオーダーとなることがあります。特定のカラーやサイズに人気が偏り欠品になることもあるため、需要の変動を継続的に確認することが必要です。
② 供給側の理由
たとえば、材料不足や工場の稼働遅延、あるいは生産リードタイムが長く入荷までに時間がかかるといったケースが挙げられます。また、地震・台風などの気象条件や機材トラブルによって、物流そのものがストップしてしまうことも珍しくありません。
さらに、実店舗に在庫を寄せすぎてEC用の在庫が足りなくなるといった「在庫の偏り」も原因の一つです。これらを防ぐには、社会情勢まで踏まえた精度の高い入荷予測を行い、先を見据えて計画的に発注を進めていくことが、欠品リスクを減らす有効な手段となります。
③ 在庫管理のミス(内部ミス・システム問題)
在庫管理のミス(内部ミス・システム問題)により、偶発的にバックオーダーが発生することもあります。たとえば、過去の販売データから需要を予測しても、想定以上に注文が集中すると在庫が足りなくなります。
また、自動発注システムで安全在庫の設定が少ないと補充が間に合わず、在庫切れを起こすこともあるでしょう。実際には売れて在庫が減っているにもかかわらず、出庫処理やシステム反映が遅れることで、実在庫数より多く表示されてしまう場合もあります。
手動で在庫数を更新する際に入力ミスがあり、実在庫と画面上の在庫数にズレが出てしまうこともバックオーダー発生の原因です。気づいたときには手遅れとならないように、日頃から定期的に設定の確認などを行うようにしましょう。
④ ECシステムの仕様(在庫0でも販売される)
ECシステムの仕様(在庫0でも販売される)により、意図せずバックオーダーが発生することもあります。たとえば、Shopifyなどで「在庫がなくても販売を続ける」設定をONにしていることで、在庫0の状態でも注文を受け付けてしまいます。
また、入荷予約販売とバックオーダーを併用していて、入荷数を上回る予約を受け付けてしまう場合にも注意が必要です。実店舗とECサイトなど複数の販売チャネルを連携している場合には、在庫情報の反映にタイムラグが生じ、在庫切れでも販売が続くことがあります。
こうした仕組みは技術的な理由ではなく、売上維持のために意図的に許可している場合も少なくありません。しかし、そうでない場合はECシステムの仕様を正確に理解して運用することが求められます。
⑤ 売上・ブランド戦略上の判断
売上・ブランド戦略上の判断でバックオーダーが発生することもあります。在庫切れのたびに販売を止めてしまうと、本来得られたはずの売上を逃してしまいます。そのため、商品が一時的に欠品していても、あえて受注を続けるケースがあります。
また、販売を止めるとSEOや広告効果が低下するため、常に購入できる状態を保つことも戦略の一つです。とくに人気商品は販売機会を逃すと売上への影響が大きく、バックオーダー運用が選ばれる場合が少なくありません。
入荷予定がある限り販売を継続し、売り逃しを防ぐ狙いが背景にあります。いずれのケースも、機会損失を減らし売上を最大化することが大きな目的となります。
予期せぬバックオーダーが発生してしまった際の対応方法

引用元:https://www.photo-ac.com/main/detail/22417607&title=stock
予期せぬバックオーダーが発生してしまった場合には、速やかに適切な対応が必要です。まずは、バックオーダーが発生してしまった原因・状況の把握と応急処置を行います。状況の把握ができたら、顧客へ状況報告や今後の対応についての説明をします。その後は、入荷までの継続的な顧客フォローと、再発防止への取り組みが重要です。
とくに、顧客への正しい連絡や継続フォローについては、ブランドや店舗の信頼性に直結するため丁寧な対応が求められます。
ステップ①:状況の把握と応急処置
はじめに行うことは、状況の把握と応急処置です。倉庫や仕入れ先へ速やかに連絡し、現在の在庫数と正確な入荷予定を確認します。そのうえで、すでに受けている注文数と入荷予定量を照らしあわせ、オーバーセールの有無や追加発注が必要かを判断します。
同時に、商品ページを修正し、「入荷待ち」「発送予定日」「未定の場合は未定」といった情報を明確に表示します。さらに、広告(Google/Instagram/Metaなど)を一時停止または内容を調整し、注文が増え続ける状況を防ぎます。
最後に、バックオーダーを継続するかを見極め、必要に応じて受付停止や販売方法の変更を行います。
ステップ②:顧客への正しい連絡
次に行うことは、顧客への正しい連絡です。バックオーダーが発生してから24時間以内に必ずお知らせのメールを送り、放置しないことが大切です。
連絡の際は、遅れが出た理由や現在の状況、新しい発送予定日をわかりやすく伝え、顧客の不安を解消することが重要です。高額商品や待ち期間が長くなる場合には、送料のサービスやクーポン付与など、誠意ある対応を検討し顧客の満足度を高めましょう。
あくまで自社都合ではなく、顧客の視点に立った丁寧な対応を心がけることが信頼維持につながります。
ステップ③:入荷までの継続フォロー
さらに、入荷までの継続的なフォローが重要です。入荷予定に変更が生じた場合は、顧客からの問い合わせを待たずに先回りして連絡し、不安を最小化しましょう。遅れが出た際は、その理由と新しい予定日を明確に伝え、状況共有を続けることが重要です。状況共有を続けることで、顧客は放置されていないという安心感が生まれます。
入荷後は、バックオーダー分を最優先で発送し、速やかな対応で信頼回復を図ります。発送完了時には「お待たせしました」という一言と感謝の気持ちを伝え、リピートにつなげましょう。
入荷までの期間は、継続的なフォローが顧客満足度を左右します。こまめな情報共有と丁寧なフォローを行うことで、クレーム予防と顧客満足度向上の両立につながります。
ステップ④:再発防止(運営側の内部改善)
最後のステップは、再発防止(運営側の内部改善)です。バックオーダーを繰り返さないためには、運営側の内部改善が欠かせません。まず、過去の販売データや広告の影響、季節要因を見直し、売れ筋商品の安全在庫や発注量、入荷までの期間を再設定します。
あわせて、自動発注システムの安全在庫(Safety Stock)設定や、リオーダーポイント(発注点)を見直し、在庫が0になる前に補充がかかる状態に改善しましょう。Amazonや楽天、自社ECなど複数チャネルで販売している場合は、在庫の配分を最適化し、特定の販路が欠品することのないようにします。
商品ページには「納期遅延の可能性」をあらかじめ明記し、購入前の期待値をコントロールすることでクレーム防止につながります。さらに、バックオーダー受付の基準(入荷未定は不可、リードタイムが長い商品は禁止など)を社内ルールとして定め、全員で共有することで再発を未然に防ぐことができます。
戦略的にバックオーダーを行う際のメリット・デメリット

バックオーダーは戦略的に導入することで、さまざまなメリットが期待できます。しかし、デメリットも存在するため、メリット・デメリットを理解した上で導入を検討することが重要です。
メリット

戦略的にバックオーダーを行うメリットには、以下の5つがあります。
① 売上機会損失を防げる
バックオーダーという仕組みがあれば、在庫がなくても販売を続けられるため、売上の機会損失を防ぐことが可能です。とくに、SNSで話題になった際やキャンペーン中など、一気にアクセスが集まる場面では、この仕組みがあるかないかで売上の伸びが違ってきます。
離脱者が多い状態はSEO(検索順位)などのサイト評価にも悪影響を与えるため、ユーザーを逃さないための受け皿をしっかり用意しておくことは、運営上の大きな強みになります。
② 需要予測の精度が上がる
需要予測の精度が上がる点も、バックオーダーを行うメリットです。バックオーダーを受け付けていないと、商品在庫が0になった後の需要を把握することはできません。バックオーダーを行うことで、リアルな市場需要を数値データとして把握できるため、以降の需要予測の精度が上がります。
需要予測の精度が上がることで、次回の仕入れ量や生産数の判断がより正確になります。売れ筋商品の在庫調整にも役立ち、在庫のズレを防ぐことが可能です。
③ キャッシュフローが改善する
バックオーダーの大きな利点は、商品の生産や仕入れよりも先に、売上が確定する流れを作れることです。先に代金を回収できることで資金の回転がスピーディーになり、結果としてキャッシュフローの改善につながります。
とくに、限られた予算でやりくりしている小規模なECショップほど、手元の運転資金を安定させられるこの仕組みは大きな助けになるはずです。
④ 在庫リスク(過剰在庫)を減らせる
品切れを恐れるあまり在庫を多く抱えすぎてしまうのは、EC運営における大きな悩みの一つです。バックオーダーという選択肢があれば、まずは必要最低限の在庫でスタートし、売れ行きに応じて受注を続けるといった柔軟な対応ができます。
これにより、過剰在庫による「売れ残り」のリスクを最小限に抑えながら販売を継続できるのがメリットです。
また、予測が難しい新商品のテスト販売や、型数(SKU)が多いショップにとっても、保管コストや廃棄ロスの不安を減らして「攻めの販売」ができる点は大きな魅力といえます。
⑤ 顧客離脱を防ぎ、関係性を維持できる
在庫が0で商品が購入できないと、顧客が離脱して他店へ流れてしまいます。バックオーダーを行うことで、顧客が他店へ流れるリスクを防げます。
さらに、顧客に対して確実に購入予約できる安心感を提供でき、入荷・発送までの間にもフォローメールなどでコミュニケーションを取り関係性を維持することが可能です。
デメリット

戦略的にバックオーダーを行うデメリットには、以下の5つがあります。
① 納期遅延によるトラブルが起きやすい
生産や物流の遅れにより、発送予定が当初の予定とずれる可能性があります。その場合、タイムリーに顧客へのフォローが必要です。
顧客側は、「いつ届くのか」「本当に届くのか」と不安を募らせ、場合によっては注文のキャンセルにつながる可能性もあります。さらに、遅延の連絡が遅れるとブランドや店舗への不信感につながるため、遅延連絡などは速やかに対応することが重要です。
② 注文ペースに入荷ペースが追いつかないリスク
入荷ペースが注文ペースに追いつかないリスクがある点も、バックオーダーのデメリットです。たとえば、100件の注文に対して80個しか商品が入荷しないという状況が起こります。そうすると商品が足りず、一部の顧客にはキャンセルをお願いせざるを得なくなります。顧客側は、「届かない」「遅い」といった不満が増え、ブランドや店舗の信頼低下につながりかねません。
ただし、ECでは在庫が0になった場合に下記のような対策を講じることで、顧客の待機状態に伴う負担を緩和できます。
- 自動的に予約注文に切り替える
- お取り寄せ扱いにして、発送時期を明確に表示する
- 抽選販売にして、対応不可能な注文数が積み上がらないようにする
このような対策を採り入れることで、顧客の待機に伴う不安やストレスを緩和することが期待できます。
③ 運営の手間・コストが増える
発送を待つ顧客に対して納期案内や確認作業が必要となり、普段より運営の手間が増えます。入荷・発送予定日や具体的な状況の説明連絡・フォローが必要となり、業務工数の増加につながります。
小規模ECほど担当者1人あたりへの負荷が重くなりやすく、人件費の増大や他業務の遅延が発生するなど、利益を圧迫する原因になりかねない点に注意が必要です。
④広告パフォーマンスが悪化する可能性
せっかく広告から顧客が流入しても、バックオーダー状態ですぐに届かない商品だと、CVR(Conversion Rate:コンバージョン率)が落ちる可能性があります。
CVRが低下することで、ROAS(Return On Advertising Spend:広告費用対効果)やCPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)などの広告指標が崩れやすくなり、広告費をムダ遣いすることにもなるため注意が必要です。
⑤ブランドイメージの低下
顧客から見ると、常に欠品しバックオーダーとなっている店舗は、在庫管理が不十分であるという印象を持たれます。顧客に不安を与えることで、信頼が低下しリピート率低下にもつながります。
長期的には、ファンが離れてしまうリスクもあり、ブランドイメージの低下につながる可能性があるため、バックオーダーの運用には慎重な判断が必要です。









