
ECサイトを運営していると「在庫数が合わない」「在庫切れで販売機会を逃した」「余剰在庫がキャッシュフローを圧迫している」といった悩みがつきものです。これらの課題を解決するには、在庫管理の仕組みを見直すことが不可欠となってきます。
EC運営における正確で効率的な在庫管理の実現は、
- 販売機会の最大化による売上アップ
- 余剰在庫の防止や消化によるキャッシュフローの改善
- 安定したEC運営の基盤づくり
などのメリットがあります。
本記事では、EC運営における在庫管理の基本を始め、重要性、手順や流れ、在庫管理システムの導入メリット、おすすめの在庫管理システムについてわかりやすく解説します。
目次
EC在庫管理の基本

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ECにおける在庫管理の重要性、基本要素、管理方法といった基本情報について解説します。
1. 在庫管理の目的と重要性
ECの在庫管理の大きな目的の一つは、欠品を防ぐことです。商品ページにユーザーが到達しても在庫がなければ購入できず、機会損失につながります。
また、商品ページはあるけれど購入できないという状態が続けば、顧客の信頼も低下します。リピーター獲得やブランドイメージにも悪影響を与えるでしょう。
一方で、過剰在庫を防ぐことも在庫管理の重要な目的です。販売しきれない滞留在庫を長期間抱えることは、キャッシュフローの悪化や保管コスト・管理コストの増加につながります。
とくに食品・化粧品・アパレルなどでは、賞味期限切れ・劣化・流行の変化などにより販売できない状態になるリスクが高いです。
さらに正確な在庫データの把握は、売上予測・仕入計画・広告戦略などのEC運営の基盤となります。在庫率・回転率・滞留在庫などを把握しておけば、仕入れや値下げといった次のアクションが取りやすくなります。
在庫管理は、ECによる販売機会を最大化し、運営のコストを最小化するために欠かせません。利益を出すための資源の管理と捉えることが、在庫管理のポイントです。
2. 在庫管理の基本要素
在庫管理を確実に行うためには、基本要素の理解が必要です。
- 在庫数の正確な把握:どこにどの商品がどのくらいあるか、最新の状態で把握する
- 入出庫の記録:入荷と出荷を確実に記録し、数量に反映させる。入力や記録漏れは在庫ズレにつながり、欠品・過剰在庫の要因になる
- SKU管理:商品をサイズ・色・素材などで分けて管理する
- 在庫評価:仕入原価・販売価格・在庫回転率などを計算し、ECの利益管理に活かす。企業の利益や資金効率の判断材料となる
これらの基本要素を押さえて運用に落とし込むことで、ECの在庫管理の品質を向上できます。
3. 在庫管理の方法
ECの在庫管理の方法は、おもに手作業での管理とシステム管理の2種類に大別できます。小規模のECでは手作業での管理が見られ、成長に伴ってシステム管理に移行するケースが一般的です。
手作業(小規模ECに多い)
Microsoft ExcelやGoogle スプレッドシートなどを活用して、手動で在庫数を管理する方法です。コストが安く導入が行いやすいことが、手作業での在庫管理のメリットです。また、自社の運用にあわせて、柔軟なカスタマイズも行えます。
一方で、手作業による入力ミスや更新遅れが起こりやすいというデメリットがあります。複数の販売チャネル・倉庫を持つと、作業量の増加と共にミスが発生しやすくなります。
また、売上や仕入れに伴う在庫数の調整を手動で行うため、リアルタイム性は低下しやすいです。ECが小規模、出品点数が少数、在庫倉庫が単一という事業の場合には、手作業でも対応できる場合もあります。
システム管理(成長期以降に必須)
もう一つは、ECの在庫管理にシステムを導入する方法です。システムの導入により、在庫管理に関わる業務を正確かつ効率的に行えます。また、手作業による入力ミスや更新遅れを防ぐこともできます。
在庫管理システムの導入のデメリットは、初期費用や月額費用などのコストが発生することです。安定した運用には担当者のシステムに対する理解が求められるため、一定の教育コストがかかります。
自社の事業規模や作業量に対して機能過剰になると、コスト負担が大きくなるため注意が必要です。手作業での在庫管理は、流通量の増加と共に作業量とリスクが高まります。
在庫管理システムによる効率的で正確な管理は、中規模以上のECには必須といえるでしょう。
ECにおける在庫管理の手順・流れ

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ECにおける在庫管理の基本的な手順や流れについて、入荷から棚卸しまで順番に解説します。
1. 仕入れ・入庫
仕入れた商品が倉庫や自社に届いた際に、数量・品番(SKU)・ロット番号・仕入れ日などを記録して入庫します。在庫管理では、棚の位置や保管場所を決め、どこに何があるか明示的に記録することが重要です。
バーコードやQRコードによる管理を活用すると、入庫時の記録精度が上がってミスを減らせます。仕入れ・入庫の段階をおろそかにすると商品の場所がわからなくなり、以降の在庫管理に影響を与えるため、正確に実施する必要があります。
2. 在庫登録
在庫登録では、在庫管理システムや管理表に入庫数を反映します。発注数と差分がないことを確認し、正確な数量を入力しましょう。入力ミスによる誤登録があると、欠品や販売停止につながるので注意が必要です。
また、在庫登録後はEC上の在庫数が購入数とリンクしていることを確認することも大切です。
3. 在庫引当・更新
ECサイト上から注文が入った場合は、即座に在庫の引当を行って販売可能数を減らします。引当や更新において、リアルタイムでの在庫の反映が重要なポイントです。
在庫数の反映が遅れれば、売れたけれど在庫がないダブルブッキングが発生するおそれがあります。そのため、複数チャネルで販売する場合には、一元管理可能な在庫システムによる自動連携が理想です。
とくにセット商品、オプション付き商品、オーダーメイド商品などの特別な商品と単品商品を同時に販売する場合には、在庫管理が複雑になりやすいです。在庫の自動引当・連動ができる仕組みの整備は必須といえるでしょう。
4. 出庫・出荷
出荷完了後は、在庫数を減算します。その際は、倉庫でのピッキング・梱包・発送までの流れを正確に記録しましょう。注文商品と出荷商品の一致は出荷の基本となり、返品・クレームの防止に直結します。
出荷作業では誤出荷を防ぐため、商品コードやバーコードによって照合を行うことが一般的です。
5. 返品・キャンセル対応
ユーザーから商品の返品があった場合には、在庫の処理が必要です。再販可能な場合には、在庫数に加算します。ECサイト上の販売可能数に反映されていることも確認しましょう。
返品商品が破損や汚れなどの商品不良によって再販できない場合は、廃棄処理を行って在庫から除外します。また、キャンセル発生時は出荷停止の処理だけでなく、在庫の戻しも忘れずに行いましょう。
返品やキャンセルの処理が正確かつ速やかに行われなければ、在庫ズレによる売り逃し・欠品・過剰在庫につながりかねません。
6. 棚卸し(定期点検)
棚卸しは、「システム上の在庫数(理論在庫)」と「実際の倉庫の在庫数(物理在庫)」を定期的に照合して誤差を修正する作業です。週次・月次・四半期ごとなど、ECの事業規模や確保できるリソースに応じて棚卸しは実施します。
在庫ズレのおもな原因として、入庫ミス・誤出荷・返品未処理などが挙げられます。定期的な棚卸しを行うことで自社の在庫ズレの原因を分析し、改善につなげることが重要です。
ECの在庫管理システムについて

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ECの在庫管理は手作業でも可能ですが、事業規模の拡大に応じてシステム管理への移行を検討する必要があります。以下で、ECの在庫管理システムについて解説します。
ECの在庫管理システムとはなにか?
ECの在庫管理システムとは、商品の在庫状況を一元管理できる仕組みです。入出庫・返品・棚卸しなどを効率化し、正確な在庫データの管理に役立ちます。
商品の販売時には、在庫の引き当てや反映が自動で行えます。さらに、システムによっては、自社ECサイト・各モールなどの複数チャネルの在庫数をリアルタイムで連動可能です。在庫減少時のアラート通知や自動発注の設定も行えます。
ECの在庫管理システムは現状の正確な在庫の把握に役立ち、欠品、過剰在庫、販売機会の損失の防止に欠かせないツールです。
導入時の注意点・選び方
ECの在庫管理システムを選ぶ際には、対応チャネル・操作性・コスト・拡張性・サポート体制といったポイントの確認が重要です。
まず、在庫管理システムが、自社のECで利用しているモールやカートなどの販売チャネルに対応しているか確認しましょう。対応していなければ運用方法の調整が必要となり、在庫管理システムによる効率化の効果が低下します。
また、ITリテラシーが低いスタッフでも直感的に利用できる操作性も重要です。操作が複雑な場合には活用に時間がかかり、教育コストも増大します。問題が発生した際にスムーズに解決できる充実したサポート体制があれば、さらに安心です。
そして、自社の課題を解決する機能性と、コストのバランスも検討しましょう。在庫管理システムは、導入の初期費用や月額利用料がかかることが一般的です。機能や事業規模に応じて数千円から数十万円のコストがかかります。
さらに、将来的な事業拡大に対応できる拡張性の高さも重要です。複数倉庫の利用、実店舗とECの連携などが必要になった際に、プランの変更・オプション追加・カスタマイズといった方法で対応できるか確認しましょう。
在庫管理システムの主な機能
在庫管理システムの代表的な機能は、以下のとおりです。
- 複数チャネルの一元管理:楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・自社ECサイトなど複数チャネルにまたがる在庫の一括管理
- リアルタイム在庫連携:注文が入ると在庫が減算され、他チャネルにも反映
- 返品・キャンセル処理:返品やキャンセルが発生した際に、在庫の加算や除外を実施
- 自動発注アラート:在庫が安全在庫数を下回った際に、通知やアラートを発信
- ロケーション管理:商品がどの倉庫の棚にあるかロケーションを把握
- 棚卸し支援:棚卸し時の理論在庫と物理在庫の照合や差異の修正をサポート
- 分析機能:売れ筋・死に筋商品や在庫回転率の把握、ABC分析などを行い在庫戦略に活用
在庫管理システムの機能は、サービスによって異なります。自社ECの課題を解決する機能を持った在庫管理システムを選ぶことが重要です。
在庫管理システムの種類
在庫管理システムには、ECカート標準機能型・一元管理システム・WMSのおもに3つの種類があります。以下で、それぞれの機能の違いや適した事業規模について解説します。
(1) ECカート標準機能型
ECカート標準機能型とは、ASPカートに標準で搭載されている在庫管理システムを指します。ASPカートは、インターネット経由で利用可能なショッピングカート機能を備えたECサイト構築システムです。
ECサイトの構築とあわせて利用できるため、シンプルかつ低コストで導入ができます。自社ECサイトのみの単一チャネルや、小規模なECの運営に向いています。
ただし、複数チャネル・複数倉庫を跨いだECの在庫管理には、不向きな場合が多いです。
(2) 一元管理システム
一元管理システムを利用すれば、複数モールや自社ECの在庫をまとめて管理できます。ネクストエンジン・ロジクラなどが代表的です。
在庫・受注・商品情報を一括管理できることが、一元管理システムの特徴です。そのため、一元管理システムは、複数チャネルの運用、年商数千万円以上のECに適しています。
豊富な機能でECの幅広い業務の効率化が実現できます。一方で、設定や運用にはある程度の知識やITリテラシーが必要となるため、注意が必要です。また、ECカート標準機能型と比較するとコストがかかりますので、運営規模や人員体制を考慮して導入を検討しましょう。
(3) WMS(倉庫管理システム)
WMS(倉庫管理システム)は、倉庫内の在庫・入出荷・棚卸しなどを効率化するシステムです。商品保管、ロケーション管理、ハンディ端末による入出荷管理などに対応し、大幅な物流効率化が期待できます。
ただし、機能に比例してコストも高くなるため、小規模ECにはWMSはオーバースペックになる可能性があるので注意が必要です。倉庫や物流拠点を持つ中規模・大規模なECの運営に、WMSは適しています。
おすすめのEC在庫管理システム6選

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おすすめの6つのEC在庫管理システムについて、以下でご紹介します。
ネクストエンジン

| 対応チャネル | 楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・Shopify・BASE・イージーマイショップなど幅広くカバー |
| おすすめ業種 | アパレル、雑貨、食品など |
| おもな機能 | 在庫管理・受注管理・商品登録一元管理・倉庫連携・発注・仕入など |
| 導入形態 | クラウド型 |
| 料金 | 初期費用0円、月額基本料金3,000円+従量課金 |
| サポート | 電話、メール、マニュアル完備、導入サポート・運用支援あり |
ネクストエンジンは、煩雑になりがちなEC運営を200以上の機能で自動化・効率化する一元管理システムです。モール・カートはもちろん、WMS・決済サービス・POS・基幹システムなどの幅広いシステムと連携できます。
柔軟なカスタマイズが可能なため、ECの事業規模に応じた運用を実現します。
公式サイト:https://next-engine.net/about-nextengine/
ロジクラ

| 対応チャネル | ネクストエンジン、Shopify、CROSS MALL、STORESなど |
| おすすめ業種 | アパレル、雑貨、食品、化粧品など |
| おもな機能 | 商品管理、在庫管理、入出荷、送り状・納品書作成など |
| 導入形態 | クラウド型 |
| 料金 | 月額12,800円〜 |
| サポート | チャット、導入支援、運用支援あり |
ロジクラは、EC・実店舗・卸売の在庫を一元管理できるシステムです。リアルタイムで在庫情報を共有できるため、欠品と過剰在庫を防ぎながら売上の最大化を実現できます。自社開発したスマホアプリにより、ハンディ端末が不要でバーコードを利用した在庫管理が可能です。
公式サイト:https://logikura.jp/
まとまるEC店長

| 対応チャネル | 楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・makeshop・Shopifyなど |
| おすすめ業種 | アパレル、雑貨、食品など |
| おもな機能 | 商品管理・在庫管理・受注管理など |
| 導入形態 | クラウド型 |
| 料金 | 初期費用0円、月額費用9,800円〜 |
| サポート | 電話・メール |
まとまるEC店長は、月額固定費のみというシンプルな料金体系で利用できる一元管理システムです。在庫管理・商品管理・受注管理といったEC運営における主要な業務の効率化ができ、作業時間と人件費の大幅削減を実現します。
公式サイト:https://www.ec-tencho.jp/
CROSS MALL

| 対応チャネル | 楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・LINEギフト・ZOZOTOWN・Shopify・BASEなど |
| おすすめ業種 | アパレル、雑貨、食品、化粧品など |
| おもな機能 | 在庫管理、商品登録、受注管理、発注・仕入管理、注文分析、実店舗や卸売との連動 |
| 導入形態 | クラウド型 |
| 料金 | 初期費用0円、月額費用10,000円〜 |
| サポート | 電話・メール、導入支援・運用サポートあり |
CROSS MALLは、商品登録・在庫管理・受注管理などのECに必須な業務を一元管理できるシステムです。幅広いモール・カートのシステムに対応しており、複数チャネルのECの管理が効率的に行えます。中規模以上のEC事業者に適しています。
公式サイト:https://cross-mall.jp/
速販UX

| 対応チャネル | 楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・LINEギフト・Shopify・BASEなど |
| おすすめ業種 | アパレル、食品、インテリア、雑貨、化粧品など |
| おもな機能 | 受注管理、在庫管理、商品管理 |
| 導入形態 | クラウド型 |
| 料金 | 速販UX(初期費用10,000円、月額費用980円〜 + 従量課金)、速販在庫(月額4,000円〜)、速販商品(5,000円〜) |
| サポート | 電話・メール、トラブル対応あり |
速販UXは、わかりやすい操作画面や導入方法が特徴の受注管理システムです。速販在庫との連携による在庫管理、速販商品との連携により商品管理まで一貫して行えます。
公式サイト:https://sokuhan.jp/
LOGILESS

| 対応チャネル | 楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング・ZOZOTOWN・Shopify・BASE・STORES・makeshopなど |
| おすすめ業種 | アパレル、食品、インテリア、雑貨、化粧品など |
| おもな機能 | 受注管理、在庫管理、在庫連携、マクロ機能、POS機能など |
| 導入形態 | クラウド型 |
| 料金 | 初期費用0円、月額費用 20,000円〜 + 従量課金 |
| サポート | チャット、AIチャット、電話 |
LOGILESSは、EC運営における受注から出荷までの自動化を実現する一元管理システムです。
OMS(受注管理システム)とWMS(倉庫管理システム)の一体型であることが特徴で、EC事業者と倉庫事業者が同じシステムを利用します。それにより、スピーディーで正確な出荷が実現できます。
公式サイト:https://www.logiless.com/







