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クロスセル戦略について初心者向けに解説!成功事例や具体的な手順

サムネイル画像:クロスセル戦略について初心者向けに解説!成功事例や具体的な手順

顧客に「一緒に買うと便利な商品」を提案することで売上を伸ばす手法をご存知でしょうか? それがクロスセル戦略です。たとえばECサイトで「この商品を買った人はこんな商品も購入しています」と表示される仕組みは典型例です。

クロスセル戦略に取り組むことで、

  • 顧客体験の向上
  • 平均購入単価の上昇
  • 長期的な顧客関係の強化

などを実現できます。

本記事では、クロスセル戦略の基本から、メリット・デメリット、企業の成功事例、導入ステップまで初心者にもわかりやすく解説します。

クロスセル戦略とはなにか?

ECサイトで買い物をしている人が、キーボードやマウスなどの周辺機器の購入も検討をしているイラスト

引用元:https://pixabay.com/illustrations/online-shop-card-purchases-internet-7089820/

クロスセル(Cross-Selling)とは、顧客が購入を検討している商品やサービスに関連する商品を提案し、購買単価や顧客体験を向上させる販売手法です。

身近な例でいえば、ECサイトの商品ページに表示される「こちらの商品もおすすめ」というレコメンド機能や、実店舗で販売員が「そのブラウスに合わせて、こちらのアクセサリーはいかがですか」と提案する場面が挙げられます。

クロスセル戦略の目的

クロスセル戦略の大きな目的は、顧客単価(AOV)の向上と顧客体験の最適化です。AOVは「Average Order Value」の略で、1回の注文あたりの平均購入金額を意味します。

新規顧客の獲得には、少なからず広告費やマーケティングコストがかかります。既存顧客への関連商品の提案は購入の確度が高いため、複数商品の購入によって効率的に売上を伸ばすことが可能です。

もう1つの重要な目的は、顧客体験の最適化です。必要なものがまとめて揃えば、顧客にとって利便性が高まります。顧客の気持ちに寄り添った提案は、ブランドへの信頼にもつながります。顧客満足度の向上によって、リピート率の改善も期待できるでしょう。

アップセルとの違い

クロスセルと混同されやすいアプローチとして、アップセル(up-selling)があります。どちらも客単価を上げるという目的はありますが、顧客心理へのアプローチが異なります。

アップセルは、顧客が購入を検討している商品やサービスよりも高額な上位モデルやプランへ誘導する販売手法です。アップセルの例として、標準プランからプレミアムプランへのアップグレードや、HDDからSSDへの切り替えなどが挙げられます。

アップセルは、単に高額な商品を提案する販売手法ではありません。上位モデルによって得られるメリットを顧客のニーズとマッチさせ、顧客満足度を高めることが重要です。

客単価を上げるという目的は同じですが、アップセルは「商品の単価を上げる」、クロスセルは「商品の関連性を広げる」という違いがあります。

クロスセル戦略のメリット・デメリット・注意点

クロスセル戦略は、成功すれば売上と顧客満足度の向上が可能な施策です。しかし、過剰な提案や不自然な組み合わせは逆効果となり、購買体験を損ねるリスクもあります。以下で、クロスセル戦略のメリット・デメリットを整理し、実施時に注意すべき点を解説します。

メリット

まず、客単価の向上、顧客満足度の向上、LTVの増大、在庫回転率の改善など、クロスセル戦略のメリットについて解説します。

客単価(AOV)の向上

クロスセル戦略の最大のメリットは、客単価を自然な形で増やせることです。既存顧客へ関連商品を提案するクロスセルは、コストを抑えて売上を伸ばせます。

広告費用やマーケティング費用がかからず、新規顧客獲得へのアプローチよりも効率がよいです。商品販売に関わるコストを抑えられるため、利益率改善にもつながります。

顧客満足度・利便性の向上

クロスセルは企業側の売上を上げるだけでなく、顧客体験の質も高めます。ほしい商品と関連した商品を、まとめて購入できるという利便性の高い体験を提供できるからです。

たとえば、スキンケアブランドの化粧水を購入する顧客に美容液や乳液などを提案すれば、顧客は「ライン使いで化粧品の効果を最大化できる」という安心感が得られます。買い忘れや追加注文の手間も省けるので、顧客満足やブランドの信頼感も向上します。

LTV(顧客生涯価値)の増大

クロスセルによって顧客が商品やサービスを気に入れば、リピートやファン化につながります。それにより、LTV(顧客生涯価値)の増大が期待できることもクロスセル戦略のメリットです。

LTVとは「Life Time Value」の略で、顧客が企業との取引開始から終了までにもたらす利益の総額を意味します。

クロスセルで、顧客は関連性の高い複数の商品を一度に体験します。商品の魅力を理解しやすくなるため、次回以降のリピートにつながります。また、リピートの際もセットで買う習慣が生まれやすくなるでしょう。

クロスセル戦略によって客単価の向上とリピートが期待でき、結果としてLTVの増大につながります。

在庫回転率の改善

クロスセルは人気商品や売れ筋商品と関連商品を組み合わせることで、在庫の偏りを解消する効果も期待できます。特にメイン商品と関連性の高い消耗品や低単価商品は、自然な流れで動かせるでしょう。

クロスセル戦略によって在庫の流動性が高まれば、キャッシュフローの改善にもつながります。

デメリット・注意点

次に、押し売り感による離脱、UXの阻害のリスク、ブランドイメージ低下など、クロスセル戦略のデメリットや注意点について解説します。

押し売り感による逆効果

クロスセルの提案が顧客に過剰な売り込みと受け取られると、逆効果になるので注意が必要です。関連性が低い商品やニーズに合わない提案を繰り返せば、煩わしさによって顧客の購買意欲が下がります。サイト離脱や取引終了につながることも考えられるでしょう。

企業側が単に売りたい商品を提案するだけでは、クロスセル戦略の効果的な実施は困難です。顧客の視点に立ち「利便性は高いか?」「ニーズに合っているか?」を十分に考え、クロスセルの提案を行いましょう。

UX(ユーザー体験)の阻害リスク

購入フローにクロスセルの過度な提案を盛り込みすぎると、顧客にとって煩わしさや購入完了までの遅延を引き起こします。特にECサイトでは、カート離脱率が上昇する可能性があります。

クロスセルの提案のタイミングや数は慎重に設計し、顧客がスムーズに決済できる導線は確保しましょう。顧客の体験を損ねずに高める自然な提案が理想です。

ブランドイメージ低下

ニーズと合わないクロスセルの提案の繰り返しは「売上ばかり重視する会社」というネガティブな印象を与える恐れがあります。特に高級ブランドや専門性を重視する業界では、提案の内容に細心の注意が必要です。

ブランドの世界観を損ねないために、コンセプトとクロスセル戦略の整合性を意識しましょう。

データ精度への依存

クロスセル戦略の精度は、顧客データや購買履歴の蓄積量や分析に大きく左右されます。データが不十分だと的外れな提案になりやすく、購入率や顧客満足度が低下します。

購買履歴の少ない新規顧客に大量の商品を提案すれば「自分には関係がない」と感じる可能性が高いです。精度の高いクロスセルの提案を行うには、十分なデータ収集と購買傾向や年齢層によるセグメントごとの分析が欠かせません。

クロスセル戦略を取り入れている企業の成功事例

数字や右肩上がりのグラフの前に男性が立っている画像

引用元:https://pixabay.com/photos/entrepreneur-idea-competence-vision-1340649/

クロスセル戦略を効果的に取り入れて成功した企業の具体的な事例をご紹介します。業界別の代表的な成功事例を理解することで、自社の最適なクロスセル戦略の立案に役立ちます。

EC・小売業界

EC・小売業界のクロスセル戦略の成功事例として、Amazonと楽天市場・ZOZOTOWNについてご紹介します。

Amazon

AmazonのサイトTOPの画像

引用元:https://www.amazon.co.jp/

クロスセルで成功した有名な企業の1つがAmazonです。Amazonは「よく一緒に購入されている商品」「お近くの似た商品を探す」など、レコメンド機能を活用して顧客単価を向上させています。

豊富な購買や閲覧のデータをもとにした自動提案のシステムによって、AmazonはAOVの増加やLTVの増大を実現しています。

楽天市場・ZOZOTOWN

ZOZOTOWNのサイトTOPの画像

引用元:https://zozo.jp/

楽天市場やZOZOTOWNは、商品ページやカート画面でクロスセルの提案を行っています。商品数が豊富というECモールの特性を活かして、ニーズに合った最適な関連商品や組み合わせを提案して売上を伸ばしています。

ファッション系の業界では、コーディネート提案関連アイテムとのセット売りで全体のスタイルを揃える体験を強化することで、セット購入や追加購入の増加が狙いやすいです。

Apple Store

appleストアのサイトTOPの画像

引用元:https://www.apple.com/jp/store

Apple Storeでは、高価格帯の主力製品を入口に相性のよい周辺機器やアクセサリを提案し、顧客満足度と収益の向上を両立しています。iPhone購入時のAppleCare+、スマホケース、AirPodsなどの関連するサービスやアクセサリの提案が例として挙げられます。

飲食業界

飲食業界のクロスセル戦略の成功事例として、マクドナルド・スターバックスについてご紹介します。

マクドナルド

マクドナルドのサイトTOPの画像

引用元:https://www.mcdonalds.co.jp/

マクドナルドの「ポテトもご一緒にいかがですか?」という定番の問いかけは、クロスセルのわかりやすい例です。

マクドナルドでは、ドリンクやサイドメニューを含めた価格設定のセット販売を標準としています。それにより、利益率の高いサイドメニューの売上の最大化が可能です。

単品の注文の場合には単品ごとよりもお得なセットを勧めることで、客単価を引き上げています。

スターバックス

スターバックスのサイトTOPの画像

引用元:https://www.starbucks.co.jp/

スターバックスは、主力商品のドリンク購入時に季節ごとの商品やサイドメニューなどを勧めて来店単価を底上げしています。顧客の関心を引きやすい商品を提案することで、満足度を高めながらクロスセルに成功しているよい例です。

金融・保険業界

金融・保険業界のクロスセル戦略の成功事例として、三井住友カード・楽天カードと保険会社についてご紹介します。

三井住友カード・楽天カード

楽天カードのサイトTOPの画像

引用元:https://www.rakuten-card.co.jp/

三井住友カード・楽天カードといったクレジットカード会社では、カード申し込み後に「ETCカード」「旅行保険」「ショッピング保険」などの提案によってクロスセルを実現しています。

このような提案により、カード1枚あたりの収益性が上がり、使い続けてもらうことでLTVも増加します。

保険会社(第一生命、アフラックなど)

第一生命のサイトTOPの画像

引用元:https://www.dai-ichi-life.co.jp/

保険業界では、契約者のライフステージに応じてがん保険や死亡保障の見直しといったクロスセルの提案を行っています。契約者あたりの保険料収入が増えるだけでなく、関係性が深まることもポイントです。それにより保険契約の継続にもつながり、LTVも増加します。

クロスセル戦略を行うための具体的な方法・手順

パソコンの画面に「SUCCESS」と書かれた右肩上がりの矢印が表示されている画像

引用元:https://pixabay.com/photos/company-startup-business-people-3607511/

クロスセル戦略を成功させるためには、単に関連商品を提案するだけでは不十分です。顧客理解・データ分析・施策の設計・効果検証まで、クロスセル戦略に関する一連のプロセスを体系化して進めることが重要です。

以下で、実際に企業がクロスセル戦略に取り組むための6つの手順を解説します。

① 顧客データの収集・分析

まず始めに行うのは、購買履歴・閲覧履歴・顧客属性などのデータ化と分析です。自社の顧客がどのような商品をどのような目的で購入しているか理解しましょう。

  • 購買履歴:A商品を買った顧客はB商品を買う傾向が見られるなど
  • カート分析:一緒に購入されやすい商品の組み合わせ
  • 閲覧履歴:閲覧数が多い関心の高い商品
  • 顧客属性:年代・性別・地域など

このようにデータを整理すると、どの商品同士の相性がよいか把握できます。また、セグメント別に傾向を抽出することで、クロスセルの提案の精度の向上が可能です。

データの収集や分析が不十分な場合には、的外れな提案になるため注意しましょう。

② 関連商品・サービスの設計

次にメイン商品と相性のよい商品やサービスをピックアップし、クロスセル戦略における提案の組み合わせを設計します。以下のように、顧客にとって自然で便利に感じる組み合わせを意識しましょう。

補完関係のある商品パソコンとマウス・カメラ・メモリーカードなどの組み合わせ
使用シーンで体験を高める商品ワインとチーズ・生ハム・ワイングラスなどの組み合わせ
上位体験を提供する商品アプリと上位プラン・アドオン機能・サポートプラン

クロスセルの提案を考える際は、利用シーンやライフスタイルを考慮した顧客に寄り添った設計が重要です。

③ 提案のタイミング設計

クロスセル戦略の鍵となるのは、顧客心理に沿った自然なタイミングでの提案です。クロスセルはいつ提示するかにより、効果が大きく変わります。主なクロスセルの提示のタイミングは以下のとおりです。

  • 商品ページ:メイン商品の詳細を見ている段階で「よく一緒に購入されている商品」を表示
  • カート画面:購入前に関連性の高いおすすめセットや追加商品を表示
  • 購入完了メール:アフターフォローとして便利な関連商品を表示
  • アプリの通知・広告:個別の閲覧履歴に基づく商品を表示

このように、顧客が自然な流れでほしいと感じるタイミングで商品の表示を行いましょう。
また、頻繁なクロスセルの提案は、サイトからの離脱や売り逃しにつながる恐れがあるので注意しましょう。

④ UI/UXの工夫

目立たせつつも押し売り感を避け、体験を損ねずにクロスセルの提案を行いましょう。画面のレイアウトはシンプルなデザインにして、購買体験の流れを損ねない設計にすることが重要です。

追加購入ボタンを設置する際は、ワンクリックで完了可能にするといった機能への配慮も行いましょう。訴求のテキストは「一緒に使うともっと便利」「セットでお得」など、簡潔でわかりやすく訴求します。

クロスセル戦略の成功には、お得さや利便性を感じる顧客体験を重視し決済の妨げにならない工夫が必要です。

⑤ オファー・インセンティブ活用

クロスセルの提案に、割引や送料無料といった具体的な特典を提示すると効果が高まります。

オファー・インセンティブの活用の例として、以下が挙げられます。

  • セット割引:複数の商品を組み合わせたセットを割引
  • 複数購入特典:複数商品を購入した際にサンプルをプレゼント
  • 限定特典・クーポン:期間中のアップグレードで割引、次回の購入に使えるクーポンを提供

金銭的なメリットが感じられるクロスセルの提案は、購入率が上がります。ただし、ブランドの世界観を損ねるような割引は逆効果となるため、コンセプトとのバランスを慎重に検討しましょう。

⑥ 効果測定と改善(PDCA)

クロスセル戦略は導入で終わりではなく、継続的な効果測定と改善への取り組みが不可欠です。特に注目すべき指標は以下のとおりです。

  • 客単価の変化
  • クロスセル商品のクリック率・購入率
  • カート離脱率の変化
  • LTV(顧客生涯価値)への影響

想定どおりのクロスセルの効果が出ている場合には、成功要因の分析を行って横展開やさらなる改善に取り組みましょう。

クロスセルの提案が逆効果となり離脱率の上昇やLTVの低下が見られる場合には、原因を分析して改善が必要です。クロスセルの提案商品の差し替えやタイミングを調整し、最適化を図ります。


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