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ECサイトのランニングコストはいくら必要?費用内訳と相場を解説

サムネイル画像:ECサイトのランニングコストはいくら必要?費用内訳と相場を解説

「ECサイトの運営にはどれくらいの費用がかかるのか?」これはECを計画する事業者が初期段階で抱える疑問です。

サーバー費用や決済手数料、広告費など、毎月発生するコストはEC事業の収益に大きな影響を及ぼしていきます。計画段階でランニングコストを見誤ると、将来的な事業リスクにつながる可能性があるのです。本記事では、ECサイトのランニングコストの内訳を整理し、相場と削減のポイントを詳しく解説します。

ECサイトにかかるランニングコストの主な内訳

項目内容一般的相場
※小~中規模ECサイト
1. ドメイン代独自ドメイン取得・更新費用数千円/年〜
2. サーバー費用レンタルサーバー利用料
クラウドサービス利用料
数千円〜数万円/月
3. SSL証明書サイトのセキュリティ証明書取得費用無料〜数千円
4. カートシステム
ECプラットフォーム利用料
ASP型サービス利用料
SaaS型プラットフォーム利用料
数千円/月〜
5. 決済手数料決済代行サービス手数料
例)クレジットカード・QR決済など
決済額の数%程度
6. 物流・梱包費用配送費用
梱包資材費用
保管費用
商品の数・サイズで変動
7. 人件費・外注費運営スタッフ費用
顧客対応システム費用
制作やシステム開発などの外注費用
数万円〜数十万円/月
8. 保守管理費用サイト更新費用
システム保守人件費
セキュリティ対策費用
数千円〜数万円/月
9. 広告・マーケティング費用リスティング広告費用
SNS広告費用
SEO施策など集客のための費用
数千円〜数十万円/月

ECサイトのランニングコストは、ドメインやサーバーといった定期的な費用から、取引が発生したときにのみ加算される決済手数料や物流コスト、さらに広告や外注費のように投資次第で増減する費用まで多岐にわたります。しかし、それぞれのコストが発生するタイミングや場面が整理されていないと、全体像をつかむのは難しくなります。

そこで本章では、ECサイトの主なランニングコストを9つの項目に整理し、分かりやすく解説していきます。解説の順序は「基盤→仕組み→取引→運営→集客」といった、ECサイトを立ち上げて実際に動かしていくプロセスに則っています。

なお、ECサイトのランニングコストは運営規模によって大きく異なります。大規模な法人ECサイトでは、サーバーの大容量化や広告・マーケティングで数百万円単位の費用を投じるケースもあります。本記事では中小規模のECサイトを中心に解説していますが、「規模別にみるECサイトのランニングコスト」という章も用意しており、大規模ECサイトのランニングコスト情報も掲載しています。将来的にECの拡張を目指す事業者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

それでは最初に、ECサイトの土台となるドメインのコストについて見ていきましょう。

①ドメイン代

  • 取得料の相場:数百円から数千円
  • 更新料の相場:数千円

ECサイトを公開するには、まずインターネット上の「住所」となるドメインが必要になります。

ドメインにつき、Webサイトのどこに、どのように表示されるものかや、種類を説明する画像

ドメインは、主に「ドメイン取得サービス」や「レンタルサーバー会社」を通じて取得するのが一般的です。代表的なサービスとしては、お名前.com、ムームードメイン、さくらインターネットなどがあり、申し込みから数分〜数時間で利用できるようになります。

取得コストの相場は数百円から数千円です。また、更新時(多くが1年間)にもコストが発生します。取得料は安くても更新料が高いドメインもあるため、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。

②サーバー費用

項目レンタル/クラウドサーバー自社サーバー(オンプレミス)
運用費用相場数千円〜数万円/月数十万〜数百万円/月
運用負担サービス提供側が保守・管理を代行自社で保守・セキュリティ管理が必要
柔軟性提供プランの範囲に限定される高い(自由にカスタマイズ可能)
スケーラビリティアクセス増に合わせて契約調整が可能機器増設が必要で即応性に欠ける
主な利用ケース一般的なECサイト大規模EC
セキュリティ要件の厳しい業種

サーバーは商品データや顧客情報を保存し、ページを安定して表示させるためのデバイスです。

サーバーを利用する方法は大きく2つあります。レンタル/クラウドサーバーといった外部サービスを利用する方法と、自社でサーバーを購入・設置・運用する方法です。

自社サーバーとレンタルサーバーの違いと、自社サーバーは大規模ECかセキュリティ要件が厳しい場合でないと選択されないことを説明する画像

一方で、よほどの大規模ECサイト、もしくはセキュリティ要件が厳しい業種のECでなければ、オンプレミス(自社サーバー)は選択されません。導入・運用コストが高額なだけでなく、専門人材による管理が必要になるからです。

中小のEC事業者にとっては、初期投資を抑えられ、アクセス増加にも柔軟に対応できるレンタル・クラウドサーバーの利用が現実的な選択肢といえます。

レンタル/クラウドサーバー費用は、小規模サイトなら1,000円〜5,000円/月程度、中〜大規模サイトでは1万円〜数万円/月程度が目安となります。スケーラビリティによって契約料は増えていきますので、事業規模に合わせた契約をすることが大切です。

③SSL証明書の費用

種類特徴費用相場
無料型基本的な暗号化機能
自動更新が多く、運用負担が少ない
無料
ドメイン認証型(DV)ドメイン所有者のみを確認
即時発行と普及率の高さが特徴
数百円〜数万円/年程度
企業認証型(OV)企業の実在性を確認
信頼性が高いが、発行まで2〜5営業日程度
数万円/年~
EV認証型アドレスバーに企業名表示
(Chrome等一部非表示化)
数万円/年〜

ECサイトでは会員登録や商品購入の際に、個人情報やクレジットカード情報などを入力します。そこで顧客が不安に感じていては、クロージングまで上手く進みません。SSL証明書はサイトの信頼性を向上させ、顧客に安心感を与えてくれます。

SSL(Secure Sockets Layer)証明書は、そのサイトの運営者が正しく認証され、通信が暗号化されていることを第三者機関が保証するものです。SSL証明書を導入すると、サイトのURLが「http://」から「https://」に変わり、ブラウザによっては鍵マークが表示されるようになります。

SSL証明書は、プロバイダー会社が用意する無料のものから、有料タイプのものまで幅広く存在します。小規模なECサイトなら無料版でも十分ですが、規模が大きくなった場合は有料の証明書取得を検討してもよいでしょう。権威性のあるSSL証明書を導入することで、より高い信頼性を示せます。

SEOの観点からも、SSL証明書の導入は重要です。GoogleはSSL対応(https化)を評価基準のひとつにしており、検索順位に影響する可能性があります。そのため、セキュリティと信頼性だけでなく、集客面でもメリットが大きいといえるのです。

④カートシステム・ECプラットフォーム利用料

構築方法初期費用主なランニングコストの相場販売手数料
ECモール型数万円〜数十万円・月額利用料:無料〜数万円
・広告費:任意(数万円〜)
2〜15%前後
ASP型無料〜数万円・月額利用料:無料〜数万円
・追加アプリ費用:数百円〜数千円
数%
パッケージ型数百万円規模・保守・更新費用:数万円〜数十万円
・サーバー費用:数万円〜
なし※
オープンソース型無料(ソフトは無料)・サーバー費:数千円〜数万円
・開発/保守費用:数万円〜
なし
フルスクラッチ型数百万円〜・サーバー・保守費用:数十万円以上
・追加開発費用:都度数十万円規模
なし

ECサイトと一口にいっても、モール型・ASP型・パッケージ型など構築方法はさまざまです。そして、選択する構築方法によってカートシステム・ECプラットフォーム利用料も変わります。代表的な構築方法ごとに、どのようなコスト特性があるのかをみていきましょう。

※ 決済代行サービスを使った場合は手数料がかかります。

 ECモール型(Amazon・楽天などを利用)

Amazonや楽天に代表されるモール型は、出店料やシステム利用料に加え、売上に応じて2〜15%程度の販売手数料が発生します。売上が伸びるほどコスト負担も大きくなります。広告出稿もモール内で推奨されるため、広告費を含めると実質的な負担率はさらに高くなる傾向があります。

ASP型(イージーマイショップ・Shopifyなど)

ASP型は月額制で利用できるクラウド型のECショップを指します。ASP型の主なランニングコストは、月額利用料と販売手数料です。イージーマイショップやBASEのように月額無料で始められるサービスもありますが、販売ごとに数%の手数料が発生します。また、追加でのアプリ利用やサイトテーマ(デザイン)購入で費用がかさむこともあります。

 パッケージ型

ベンダーからソフトを購入して構築するECショップはパッケージ型に分類されます。パッケージ型の主要コストは保守費とサーバー費用です。保守サポートや機能追加に費用(数万円〜数十万円/月)が発生します。また、スケーラビリティを確保するためのサーバー費用もかさみます。

オープンソース型(WooCommerce、EC-CUBEなど)

オープンショップ型は、WooCommerceなど無料ソフトを自社サーバーに導入して構築されるECショップです。ソフト自体は無料ですが、サーバー費用、カスタマイズ開発費、保守・セキュリティ対応費用などで、ランニングコストが高額になる傾向があります。

フルスクラッチ型

フルスクラッチ型は、一から独自にシステムを構築するタイプのECショップです。ゼロから開発するため、カスタマイズの自由度は高いですが、構築と運用には専門人材が必要になります。セキュリティ対応も自社で行わなければなりません。そのため、システム保守やセキュリティ対応に大きなコストがかかります。

各構築方法の違いや詳細については、こちらの記事も参考にしてみてください。

⑤決済手数料

決済手段特徴費用相場
クレジットカード決済利用率が高い
VISA/Master/JCBなどブランド対応が大切
数%
コンビニ決済コンビニで支払い可能
前払い方式
若年層や現金派に利用されやすい
数百円/件~
銀行振込利用者が口座へ振込
入金確認の手間あり
顧客負担のケースも
代引き(代金引換)商品到着時に現金払い
高齢層に根強いニーズ
数百円/件~
QRコード決済スマホ決済の普及で急増中
若年層・モバイルユーザーに人気
3%前後
キャリア決済携帯料金と合算
アプリ課金やデジタル商品で強み
数%~十数%
後払い決済商品到着後に支払い
安心感が高く、CVR改善も
数%

ECサイトでは多くの場合、クレジットカードだけでなく複数の決済方法を「決済代行サービス」を通じて導入します。そして、決済時には決済代行会社に支払う手数料が発生します。わずか数%程度だからといって軽視してはいけません。長期的に、ECの売上を圧迫する要因になる可能性もあります。

一方で、手数料が高いからといって、決済手段を限定してしまうと顧客を競合に奪われる結果になりかねません。ある程度のコストを支払っても、決済手段を充実させることはECサイトにとって重要なのです。

⑥物流・梱包費用

項目特徴費用相場
配送料サイズ・重量・配送地域で変動数百円~数千円/商品
梱包資材費少額でも積み重なると大きな負担数円~数千円/商品
倉庫・在庫管理費大きな商品ほど高額になる
大量の商品の管理でも負担増
数万円/月~

商品を届けるコストとして、具体的には「配送料」「梱包資材費」「倉庫・在庫管理費」が挙げられます。配送料はサイズや重量、配送地域によって変動します。特に全国配送を行う場合は、高額になることがあります。

一方で、送料を顧客負担とする事業者も少なくありません。ただし、同じ商品を扱う競合が「送料無料」を設定していると、自社が不利になる場合があります。顧客負担にするか、送料無料にするかは競合状況を見ながら判断するとよいでしょう。

梱包資材費は一件ごとの負担は小さくても、件数が増えると意外と大きなコストになります。さらに大量の商品を仕入れる場合は、倉庫や在庫管理のコストについても見積もらなければなりません。

⑦人件費・外注費

項目内容費用相場
人件費商品登録、受注処理
顧客対応、販促活動など
事業者ごとに給料調整で対応
安く設定しすぎると離職の原因になる
外注費デザイン、広告運用
システム改修など専門作業へのコスト
依頼先事業者によって異なる(数千円〜数百万円/案件が目安)

ECサイト運営においては、システムだけではなく人的リソースが重要になってきます。小規模のうちは自力で対応できますが、規模が大きくなると人を雇う必要性もでてきます。専門性の高い業務は外注することになるかもしれません。

無理に事業者のみでサイト運営を続けていくと、対応遅れやシステム障害による販売機会損失につながるリスクが生じます。売上が上がってきた際は、人件費や外注費といったコストも見積り、戦略的に使っていくことが大切です。

⑧保守管理費用

項目内容費用相場
事業者PC・社内環境のセキュリティ対策ウイルス対策ソフト導入
ネットワーク管理
年数千円~数万円
顧客データの管理顧客情報のバックアップ
アクセス権限管理
数千円~
外部サービスやプラグイン費用機能拡張用アプリや外部連携サービス月数百円~数万円
データバックアップ・復旧クラウド保存や外部ストレージ利用月数百円~数万円

ECサイトを安全かつ安定的に運営するためには、保守管理にもコストを支払っていく必要があります。

中小規模の事業者はモール型やASP型を利用することが多いため、「自分には保守管理費用は関係ない」と考えがちです。確かに、サーバー設定や基本的なセキュリティ対策はプラットフォーム提供者が担保してくれます。しかし、それだけではECサイトや顧客情報が十分に保全できるとは限りません。

たとえば、事業者自身のパソコンや社内ネットワークに不正アクセスがあった場合はどうでしょう。ECサイトの情報改ざん、もしくは顧客情報流出、そのようなリスクが生じる可能性があります。これはECプラットフォーム業者の責任ではありません

つまり、ECサイト事業者自身のPCや使用ネットワークに、ウイルス対策やバックアップシステムの整備が求められるのです。

⑨広告・マーケティング費用

項目内容費用相場
広告費リスティング広告、SNS広告
ディスプレイ広告など
数百円~数万円
継続する場合は飛躍的に増加
SEO対策費コンテンツ制作や外部コンサル費用自社でやれば通常の人件費に含有
外注は1万円~/案件
メール・SNS運用費メルマガ配信システム、SNS運用ツールツールは数千円~
キャンペーン施策費クーポン発行、送料無料施策など対象商品ごとにコストが発生

広告・マーケティング費用は、増やした分だけ集客効果が期待できます。一方で、コストをかけすぎると売上を圧迫するような事態になりかねません。一般的に広告・マーケティング費用は売上の数%程度が適切といわれていますが、自社に合った施策とコストを見極めていくことが大切です。

規模別でみるECサイトのランニングコスト相場

EC規模年間売上ランニングコスト目安特徴
小規模数十万円〜数千万円数万円/月~個人・自宅運営の小規模EC
主にECモール型、ASP型
中規模数億円以上数十万円/月~組織的運営、複数チャネル展開
マーケティングや在庫管理体制が整う段階
主にASP/パッケージ/オープンソース型
大規模数十億円以上数百万円/月~多国籍展開や大企業による運営
専用システムや物流基盤も独自構築
グローバル市場をターゲットとする規模
フルスクラッチ型ECショップの採用

これから始めるECの事業規模は具体的に想定されているでしょうか。一般的には、年商数十万円〜数千万円クラスを小規模、数億円クラスを中規模、そして数十億円以上のクラスを大規模ECに分類します。

それぞれの規模では、主なランニングコスト項目も大きく変わります。ここでは、小規模・中規模・大規模ECサイトで、代表的なランニングコストの目安を整理していきます。

将来的にECを拡張していきたい事業者の方に向けても、資金計画の参考になれば幸いです。

小規模ECサイトの相場

小規模ECでは、モール型やASP型サービスの低コストプランを利用するケースが多いです。それらのプラットフォームの月額利用料は無料から数千円、高くても数万円程度です。

小規模ECサイトのランニングコストで多く割合を占めるのは、決済手数料や販売手数料、広告費です。売れるごとに販売手数料、決済代行サービスの利用料が発生します。売上に対する広告費も大きくなる傾向があります。

中規模ECサイトの相場

中規模ECで主に採用されるサイト構築タイプが、ASP型の上位プランやパッケージ型、オープンソース型です。コスト構造の特徴は、人件費・外注費・物流コストの比率が大きい点にあります。

商品点数や受注件数が増えるため、顧客対応や在庫管理に専任スタッフを配置する必要があり、その分人件費が増加するのです。チームに専門人材がいない場合は外注をすることになります。また、多くの商品を保管しておく倉庫のコストも見積もる必要があります。総じて、ランニングコストは数十万円/月以上になります。

大規模ECサイトの相場

数十億以上を売り上げる大規模なEC事業では、フルスクラッチ型でサイトを構築することがあります。その場合、月額ランニングコストは数百万円以上に上ります。

ランニングコストの中心は、システム保守・サーバー費用・人件費です。アクセス数や商品点数が多いため、専用サーバーの用意やクラウド環境の設定も求められます。さらに、セキュリティ確保やECの安定稼働のために、継続的な保守管理が不可欠です。そして、これら業務をカバーする専門人材が必要になります。

必要に応じて発生する追加コスト

  • デザイン・リニューアル費用
  • システム拡張や機能追加
  • コンテンツ制作費用

ECサイトの運営においては、日常的に発生するランニングコストに加えて、状況に応じて突発的・臨時的に生じるコストもあります。これらは定期的に発生するわけではありませんが、事業の成長や環境の変化に応じて必要になる場合があります。

デザイン・リニューアル費用

サイトのデザインを一新したり、UI/UXを改善したりする際に発生する費用です。ECサイトの見た目の改善は、コンバージョン率や顧客満足度に直結します。例えば、季節やイベントなどに合わせてサイトを更新していきます。デザイン・リニューアル費用は、小規模ECサイトなら数千円〜、中・大規模ECサイトであれば数十万円規模になります。

システム拡張や機能追加

定期購入機能や多言語対応、外部サービス連携機能などを追加する場合に発生するコストです。越境コマースへの参入、他社との業務提携で生じる可能性があります。ASP型ではアプリやプラグイン導入費が、オープンソース型やパッケージ型では開発・保守費用がかかります。ASP型サイトのアプリ・プラグインであれば数百円程度で追加できるケースもあります。

コンテンツ制作費用

新商品・新サービスの記事や動画など、販促のためのコンテンツ制作にかかる費用です。プロに依頼する場合は、数万円〜数十万円/件かかることもあります。クオリティを追求するだけでなく、投資対効果をしっかりと見極めることが大切です。

ECサイトのランニングコストを削減する方法

ランニングコストが大きくなると、事業者は「何とか圧縮できないか」と考えるものです。とはいえ、実際には「どの費用をどの程度削減すべきか」「そもそも削ってもよい項目なのか」と判断に迷うケースも少なくありません。ここでは、サービスの品質や売上機会を損ねずに、EC事業の持続・向上につながるコスト削減方法について解説します。

ECサイトのランニングコストを削減する方法を紹介する画像

カートシステム・ECプラットフォームの見直し

  • 不要なプラグインの削除
  • ECプランの切替
  • プラットフォームの移行

拡張アプリやプラグインはECの業務効率化に効果的ですが、気づかないうちに増え、毎月数万円単位のランニングコストになっていることがあります。
初期の段階で利用実態を把握し、必要な機能を明確にしておくことが重要です。そのうえで、事業の成長や運用状況に合わせて不要な機能を削減していけば、ランニングコストを大幅に抑えることができます。

また、ASP型では初期費用は安いものの、売上に応じて販売手数料が膨らんでいきます。そのため、一定の売上規模を超えた時点でプラン変更や別のプラットフォームへの移行を検討し、長期目線で利益拡大を図っていくことが推奨されます。

物流・配送コストの削減

  • 配送業者の契約見直し
  • 複数業者の使い分け
  • 梱包資材の最適化

物流・配送コストはEC運営において見直し効果が出やすい項目です。まず注目すべきは配送業者との契約条件です。一定の取引量を見込める場合は、送料単価の交渉や法人契約に移行することで、コストを抑えられることがあります。

また、サイズや配送先地域ごとに、安い料金の業者を使い分けることも有効です。さらに、過剰包装を減らせば資材費が下がるだけでなく、サイズ縮小による配送料の圧縮も期待できます。

広告費の削減

  • 広告チャネルの選択
  • SEO活用
  • SNS自動化ツールの活用

広告は集客効果が得られる一方で、使いすぎると利益を圧迫してしまいます。まず、使用するチャネルを最適化していきましょう。自社の商品や顧客層に合う媒体へ予算集中させることで、同じ費用でも広告効果を高められます。

加えてSEO対策を実施し、自然流入にも力を入れていくべきです。即効性は薄いものの中長期的には広告依存を減らし、安定的な集客が期待できます。さらに、SNSの自動化ツール導入も広告部署での人件費削減につながります。

外注費の見直しとインハウス化

  • 外注費を洗い出す
  • できる業務は内製化
  • 専門業務は外注継続でもOK

外注費は放置すると積み上がりやすいコスト項目です。まずは何に外注費がかかっているかを把握し、社内で対応できる業務はインハウス化して固定費を抑えていきましょう。

一方で、専門知識や高度なスキルが必要な業務まで無理に自社で行うと、効率低下や運営リスクを招きます。ただ外注を減らすのではなく、「自社でやる部分」と「外部に任せる部分」を見極めることが大切です。

売上に対する適正なコスト割合を考えよう

ECサイトを運営するうえで、コストは「削ればいい」という単純なものではありません。売上に対してどの程度の割合をランニングコストとしてかけるべきか、その適正ラインを知っておくことで、利益を確保しながら持続的な事業成長を実現できます。本章では、適正なランニングコストの目安やKPI設定の考え方に加えて、LTV(顧客生涯価値)の視点を取り入れたコスト管理について解説します。

適正なランニングコストの目安

ランニングコストの目安は売上の20〜30%程度といわれています。小規模ECではこの比率がやや高くなりがちです。

ランニングコストが過剰になり、利益を圧迫する事態は避ける必要があります。一方で、逆に削りすぎてECビジネスへの投資を止めてしまうのもよくありません。事業継続に無理のない範囲で、ランニングコストを見積もっていくことが大切です。

KPI設定とコスト管理の考え方

ランニングコストを適切に管理するために、主要な費用をKPI(重要業績評価指標)として設定し、定期的にチェックしていきます。例えば「売上に占める広告費率」や「1件あたりの配送コスト」など、指標データとして蓄積していくと、どこに無駄があるのかを明らかにできます。

LTV(顧客生涯価値)の視点を取り入れる

コスト削減を考える際に見落とされがちなのが、顧客の生涯価値(LTV)の視点です。顧客がリピート購入や定期購入をしてくれるなら、初期費用やマーケティング費用を多く投じても、長期的には十分回収できる可能性があります。

重要なのは、「LTV>顧客獲得コスト(CAC)」の関係を保つことです。このバランスを意識することで、ランニングコストを顧客のリピーター化やファン化を促すための戦略的な投資として捉えられるようになります。

無料・低コストサービスを利用する際の注意点

「まずはリスクを抑えて、無料版でECをスタートさせたい」と考える事業者の方も多いのではないでしょうか。無料や低コストのASP型サイトであれば、初期投資をほとんどかけずにEC事業を立ち上げられます。

一方で、こうした無料版サービスは「機能制限がある」「販売手数料が高い」といったデメリットがあります。特に売上が伸びるほど手数料負担が大きくなるため、結果的に有料プランの方が安くなるといったケースもあるのです。

また、無料プランのサポート体制についても掌握しておく必要があります。サポート体制がしっかりしていないと、トラブル対応に時間や外注費がかかり、かえってコスト増になることがあるからです。中長期でEC事業を拡大することを視野に入れているのであれば、有料プランや他の有料システムへの移行を計画してもよいでしょう。

まとめ

ECサイトの運営には、ドメイン代やサーバー費用、決済手数料、物流費、人件費、広告費まで、さまざまなランニングコストが継続的に発生します。これらは事業規模や運営方法によって変動し、掌握しづらいのが実情です。

本記事を通じて、ECサイト運営におけるコスト構造の全体像と、運営プロセスにおける主要なランニングコストが整理されたと思います。

重要なのは「削るべき部分」と「投資すべき部分」を判断し、自社ECの成長ステージに合わせて最適なコスト設計を行うことです。短期的には無駄な出費を抑え、長期的には集客やリピーター獲得に投資する。このバランスを意識することで、ランニングコストは単なる負担ではなく、EC事業を成長させるための戦略的投資として活かされるようになるのです。


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