
ECカートシステムは、商品を“カートに入れる”操作から、決済・注文・在庫管理までを一括で管理できるシステムです。ネットショップ運営に必要な機能がすべて自動化されているため運営コストを抑えられ、テンプレート機能などを活用すれば初期開発の手間も大幅に削減できます。
本記事では、
- そもそもECカートシステムとは何か
- 導入のメリット・デメリット
- 代表的な種類とサービス選びのポイント
について、丁寧に解説します。
目次
ECカートシステムとはなにか?

引用元: https://www.photo-ac.com/
ECカートシステムは、商品選択から決済、注文情報や在庫管理までの流れをひとまとめにできるシステムです。一般的には、この機能を搭載したECサイト構築ツールを指して「ECカートシステム」と呼びます。
たとえば、注文が入ったときの在庫調整やお客様へのメール送信なども、すべてシステムが自動で行います。専門知識がなくても、簡単な設定だけでショップをはじめられるため、運営の手間を大幅に削減できます。
わかりやすくいうと…
ECサイトをすべてイチから作る場合
料理に例えるなら、カレーをスパイスから調合し、玉ねぎを飴色になるまで炒め、にんにくやしょうがを刻んで…と、完成までに何時間も手間とコストがかかります。料理の知識や経験がないと失敗しやすく、材料費や設備投資も膨らみがちです。
実際のECでいえば、オープンソースをフルスクラッチで改修するケースや、自社開発で基幹システムとつなげるケースがこれに近いです。
自由度は高い一方、専門エンジニアの工数が膨らみ、バージョンアップ対応やセキュリティ保守も自社負担になります。その結果「効率改善どころか、維持コストが増える」落とし穴になりがちです。
| 初期費用 | 高くなりやすい |
| 導入スピード | 遅い |
| 自由度 | 非常に高い |
| セキュリティ・保守 | 自社で負担 |
| 向いているケース | 独自要件が多い、大規模内製 |
ECカートシステムを使用する場合
料理に例えるなら、まるでレトルトカレーや料理キットのように、必要な材料や手順がすべて揃って提供されます。ごはんにかけるだけ、鍋で温めるだけで完成。はじめてでも迷わず短時間でおいしい一皿が楽しめるイメージです。
実際のECでいえば、必要機能が標準で揃っているASP型カート等がこれに当たります。
決済・在庫・配送連携などが最初から揃っているため、運営に必要な工数を劇的に削減可能。さらにアプリやプラグインを追加すれば、マーケティング機能や越境EC対応なども容易に拡張できます。
結果として、効率は上がりつつ運用コストも予測しやすいのが強みです。
| 初期費用 | 低〜中 |
| 導入スピード | 速い |
| 自由度 | 中(テンプレ+拡張で対応) |
| セキュリティ・保守 | システム側が負担 |
| 向いているケース | スモールスタート、早期立ち上げ |
どんな機能があるのか?
ECカートシステムには、ネットショップ運営に欠かせない機能一式がはじめから揃っています。主に以下のような基本機能があり、すべて専用画面からの設定で簡単に使いはじめられるのが特徴です。
- カート機能(途中保存・商品のまとめ買い)
- 決済機能(各種決済・セキュリティ)
- 注文処理(自動通知・出荷管理)
- 会員登録(購入履歴・ポイント/クーポン機能)
- 商品管理
カート機能
いわゆる「買い物かご」のシステムです。ユーザーが選んだ商品を一時的に保持し、複数アイテムをまとめて購入できます。キャッシュにより途中保存されるため、後からの追加・購入も簡単に行え、購入意思のある顧客を逃さず受け止めます。
決済機能
クレジットカード、コンビニ決済、PayPayなど、多彩な支払い手段に対応できます。決済代行サービスとの連携でセキュリティも担保され、不正利用のリスクを抑えながらスムーズな購入につながります。
注文処理
購入完了後のデータを自動で記録し、管理画面やメール通知でリアルタイムで注文通知が届きます。処理ステータスの管理やキャンセル対応も効率化でき、発送に関わる工数を大幅に削減できます。
会員登録・ログイン
ユーザーがアカウントを作成し、履歴参照や次回以降のスムーズな購入が可能に。会員限定のクーポン配布やポイント施策と組み合わせれば、リピーター育成にもつながります。
商品管理
商品情報の登録、在庫数の調整、価格設定などを一元管理できます。CSVへの一括入力機能やバリエーション管理機能を活用すれば、大量の商品を扱う場合も運用コストを抑えながら正確な管理ができます。
ECカートシステムのメリット・デメリット
ECカートシステムには運営効率や売上のアップに大きな強みがある一方、コストや自由度の制約といった注意点も存在します。ECカートを導入するうえでのメリット・デメリットについてそれぞれ詳しく紹介します。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| ・サイトの作成・運営が効率化 ・セキュリティが強い ・集客・売上機能が豊富 ・スマホ/多言語対応 | ・月額費用・決済手数料がかかる ・カスタマイズに制約(ASP) ・サービス停止・障害リスク(クラウド) ・フルスクラッチより柔軟性に欠ける |
メリット
ECサイトの作成・運営が効率化される
ECカートを導入すれば、テンプレートを選ぶだけでサイトデザインや構造を整えられます。運営面においても、商品登録から受注処理や決済、在庫管理までを一括で管理できるため、日々のショップ運営をスムーズに回せるようになります。
セキュリティ面が強い
ほとんどのECカートシステムは、SSL/TLSによる通信暗号化はもちろん、管理画面への不正ログイン防止や決済情報の厳格なセキュリティが標準機能として備わっています。
ASP型であればサーバー運用も外部に任せられるため、自社でのセキュリティ対策負担が軽減されますし、脆弱性発見時のアップデート対応も迅速です。
集客・売上アップに役立つ機能が豊富
ECカートシステムにはクーポン発行やポイント制度、レビュー投稿、レコメンド機能など、顧客を引きつける施策がワンパッケージになっています。
メルマガ配信や再入荷通知でリピーター育成を促せるほか、Googleショッピング連携や広告ツールとの接続もスムーズに行え、マーケティング効率が向上します。
スマホ対応・多言語対応ができる
ほとんどのカートシステムはスマホに最適化されており、モバイルユーザーの離脱を防いでくれます。多言語・多通貨対応機能を備えたサービスであれば越境ECにも簡単に対応可能で、国内外の顧客を同じプラットフォーム上で一括管理できます。
デメリット
月額費用・決済手数料がかかる
ECカートシステムを導入した場合、無料プランでも売上に応じた決済手数料が発生し、有料プランでは月額料金や追加機能の課金も必要です。利益率の低い商材を扱う場合、コスト負担が相対的に大きくなる点に注意が必要です。
カスタマイズの自由度が低い(ASP型)
デザインや機能の変更に制限があり、独自の販売フローや特殊なUIを実装しにくい場合があります。拡張性を重視する場合やブランドの世界観を細かく作り込みたい場合は、自由度の低さがネックになることもあります。
サービス停止・障害リスク(クラウド型)
ECカート運営会社のメンテナンスや予期せぬ障害が発生した際、自社サイトが一時的に閲覧・購入不可になるリスクがあります。システムを完全にコントロールできないため、万一の際の対応策を事前に検討しておくことが重要です。
柔軟性・自由度はフルスクラッチに劣る
フルスクラッチ開発に比べ、特殊な外部システムとの連携や独自機能の追加には限界があります。事業拡大に伴い新たな要件が増えた際、ECカートシステムの仕様が成長の妨げになる可能性もあります。
ECカートシステムの種類

| タイプ | 初期・月額費用 | 自由度 | 運用負荷 | 導入スピード |
|---|---|---|---|---|
| ASP | ◎低 | ○中 | ◎低 | ◎速い |
| オープンソース | ◎低 | ◎高 | △高 | △遅い |
| パッケージ | ×高 | ◎高 | ○中 | ○中 |
| クラウドEC | ○中 | ○中 | ○中 | ○中 |
ECカートシステムは、提供形態やカスタマイズ性の違いから大きく4つに分類できます。それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
ASPカート
特徴
ASPカートはクラウド上で提供されるサービスで、自社でサーバーを用意・管理する手間がかかりません。契約後は初期設定済みの管理画面にすぐアクセスでき、導入期間が短いのも特徴です。
日本国内で最も多く利用されていて、小規模ショップから大規模事業まで幅広く導入されています。
代表サービス
- BASE
初期費用と月額料金が無料で、初心者でも直感的に使える操作性と豊富なテンプレートが特徴。「BASE Apps」を活用すればクーポン発行や予約販売など機能拡張も容易です。 - STORES
初期費用無料ではじめられ、初期コストを抑えたい個人事業主に人気。デザイン性の高い本格的なストアを簡単に作れる点が特徴です。 - Shopify
高いカスタマイズ性と豊富なアプリによる拡張性が特徴。海外進出にも強く、多言語・多通貨機能が充実しています。 - イージーマイショップ
初期費用無料で利用できるプランがあり、無料でもクーポン・SEO対策・広告連携など十分な基本機能が活用できます。豊富な機能と手厚い日本語サポートが魅力です。
メリット
初期費用を抑えられる無料プランや低価格プランも豊富に用意されており、最初はコストをあまりかけたくはない事業者でも気軽にはじめられます。メンテナンスやセキュリティ対応は提供会社が担うため、自社リソースを他の業務に集中できるのも大きな利点です。
テンプレートやプラグインが充実しており、それらを組み合わせるだけで多彩な機能が導入できる点も魅力です。
デメリット
初期設定が簡単なぶん、用意された枠組みの中でしかデザインや機能を変更できないため、独自性の高いカスタマイズには制約があります。特殊な決済フローや外部システム連携を要する場合は、追加開発が必要になることもあります。
また、月額利用料や販売手数料が発生するため、利益率の低い商品を扱う場合はコスト負担が大きく感じられることがあります。
オープンソース型
特徴
オープンソース型ECカートはソースコードが公開されており、自由に改変・運用できる点が最大の魅力です。自社サーバーにインストールして利用するため、導入費用を抑えつつフルスクラッチに近い柔軟性を得られますが、環境構築や管理、セキュリティ対策は自社での対応が必要です。
代表サービス
- EC-CUBE
日本発のオープンソースECプラットフォームの代表格で、国産決済や配送モジュールなど、プラグインやテーマが豊富に揃っています。中小~大規模まで対応可能ですが、大規模ストア向け機能は有料プラグインが必要になる場合が多い点に注意が必要です。 - Zen Cart
PHPベースの老舗オープンソースカートで、シンプルながら拡張性が高く、細かなカスタマイズがしやすい点が特徴です。多言語・多通貨にも対応しているため、越境ECにも強みのあるシステムです。 - Welcart(プラグイン)
WordPressに導入する日本製のECカートプラグインです。ブログとの連携や管理画面の使いやすさが特徴で、公式決済モジュールなら比較的低コストで導入できます。小規模の物販を低コストで試したい場合には手軽で便利なシステムです。
メリット
高いカスタマイズ性により、自社の業務フローや独自機能を最適化して実装できます。基本的にライセンス費用は無料の場合が多く、初期コストを抑えつつ本格的なECサイトを構築できる点も魅力です。
デメリット
サーバー管理やセキュリティ対応、システムのアップデートなどを自社で担う必要があり、専門知識や開発スキルが求められます。不具合が発生した際のサポートは自己解決が前提となるため、リソースに余裕がない場合は運用負荷が大きくなりがちです。
パッケージ型
特徴
パッケージ型ECカートはソフトウェアを一括購入し、自社環境に構築して運用するシステムです。大手企業やBtoB向けビジネスでの採用例が多く、導入時に詳細な要件定義や設計を行ったうえで開発することで、高いセキュリティと安定性を確保できます。
代表サービス
- ecbeing
国内ECパッケージ市場で高いシェアを誇る高機能システムです。BtoB・BtoC両対応かつ大規模トラフィックにも耐えうる安定性が強みで、中堅・大手企業の複雑な要件に対応できる高いカスタマイズ性があります。 - W2 Unified
豊富な業務機能を標準搭載し、オムニチャネル展開やERP連携にも柔軟に対応できる、総合通販向けのオールインワンECプラットフォームです。D2Cビジネスやリピート通販に強みを持っています。 - EC-ORANGE
国内のパッケージ型のECカートシステムです。
POSシステムとの連携もスムーズで、マルチテナントやオムニチャネルなど多様な形態に対応しており、中〜大規模ECサイトの構築に実績があります。
メリット
パッケージ型ECカートはビジネス規模に合わせた柔軟な構成が可能で、大規模トラフィックにも対応できる高い拡張性を備えています。自社運用により高度なセキュリティ要件を満たせる点も強みで、大規模なビジネスに適しています。
デメリット
初期費用が数百万円規模と高額になりやすく、構築や運用には専門スタッフのアサインが必要です。システム構築とは別に、アップデートや保守の契約が必要な場合が多く、ランニングコストや工数が膨らむ可能性があります。
クラウドEC型
特徴
クラウドEC型カートは、ASP型のメリットを引き継ぎつつ、より高度な機能と柔軟なカスタマイズ性を兼ね備えたシステムです。サービスはすべてクラウド上で提供され、月額課金で常に最新バージョンが利用できるため、機能拡張やアップデートを自社で管理する手間が省けます。
代表サービス
- ebisumart
個別カスタマイズ可能で、無償のバージョンアップが特徴のパッケージです。自由度が高く、カスタマイズ性と拡張性を両立。日本人向けの手厚いサポートや使いやすい管理画面も魅力です。 - メルカート
国内シェアの高いクラウドECで、多彩な決済手段・物流連携オプションを標準提供しています。豊富な機能と安定したインフラに強みがあります。 - GMOクラウドEC
GMOメイクショップ株式会社が提供する、セキュリティやスケール性に優れたECカートです。デザインテンプレートも豊富で、カスタマイズの自由度も高いシステムです。 - ecforce
D2Cに特化したECカートシステムです。定期的に新機能をリリースしており、最先端の機能を利用できるのが強みです。スタートアップから大企業まで、幅広い導入実績があります。
メリット
クラウドEC型カートはASP型よりも高度なマーケティング機能やAPI連携機能を標準搭載している場合が多く、ビジネス要件に合わせたカスタマイズが可能です。プラットフォーム側で継続的に機能追加や性能向上が行われるため、成長フェーズにある企業でも安心して利用できます。
デメリット
高度な機能と柔軟性を得られる反面、ASP型よりも月額費用が上昇しやすく、導入時には専門知識が必要です。自社開発チームや外部エンジニアとの連携が求められるため、小規模事業者には負担となる場合があります。
ECカートシステムを選ぶ際のポイント

ECカートシステムは機能や価格だけでなく、自社のビジネスモデルや運営体制に合わせて選ぶことが重要です。以下の5つの視点から最適なプラットフォームを見極めましょう。
目的・ビジネス規模に合っているか
副業レベルの小規模ショップであれば、無料プランや低価格プランで十分な機能が揃います。しかし、法人や中〜大規模サイトでは、高度な在庫連携や多店舗管理、越境ECへの対応など、事業成長に耐える機能が必要になります。
まずは「今使いたい機能」と「3年後の売上想定」を照らし合わせ、長期的に使い続けられるサービスを見極めましょう。
初期費用・ランニングコストは予算内か?
月額料金はもちろん、注文ごとに発生する決済手数料や販売手数料もトータルコストに含めて試算する必要があります。
無料プランでも売上増加に伴いコストが積み重なる場合があるため、固定費型と成果報酬型の両方でシミュレーションを行い、自社の利益率を圧迫しない運用モデルを選びましょう。
操作性・管理画面の使いやすさはどうか?
日々の受注処理や商品登録をスムーズに行えるかどうかは、運営効率に直結します。デモやトライアルを活用し、実際に管理画面を操作してみることが重要です。複雑すぎる設定画面やわかりにくいUIは担当者の作業時間を浪費し、継続的な運用を阻害する原因になります。
デザイン自由度とカスタマイズ性はどうか?
サイトのブランディングや独自の販売フローを実現したい場合、HTML/CSSやAPIの編集が可能かどうかを確認してください。テンプレート式のサービスは手早く構築できる反面、標準機能にないシステムには対応していないこともあります。
カスタマイズしたい内容と、自社の開発リソースや外注予算と照らし合わせ、費用対効果の高い範囲を見定めましょう。
サポート体制はどうか?
トラブル発生時に迅速に解決できるかどうかは、運営の安心感を大きく左右します。チャット、メール、電話などのサポート窓口や受付時間を事前に確認しておきましょう。
とくに電話サポートがあるかどうかは緊急時の心強さに直結するため、サポートレベルの詳細を契約前にしっかりと把握しておくことをおすすめします。







