
「ECサイトを立ち上げたいけれど、構築方法がたくさんあってどれが最適なのか分からない…」「専門用語が多くて、各方法の費用や特徴の違いを比較するのが難しい」という声をよく聞きます。
ECサイトの構築では、いきなりツールを選ぶのではなく、まずご自身のビジネスの具体的な要件を固めることが重要です。「かけられる予算はいくらか」「将来どんな機能が必要になるか」などを明確にすることで、最適な構築方法が見えてきます。
この記事では、個人事業主の方から中堅・大企業様まで、それぞれの事業フェーズに最適なECサイトの構築方法を解説します。カートASPの簡単なはじめ方から、パッケージやフルスクラッチでの本格的な構築まで、それぞれのメリット・デメリットと費用を比較し、おすすめのツールまで提案します。
構築方法 | 概要 | メリット | デメリット | 費用目安 (初期/月額) | こんな人に おすすめ |
---|---|---|---|---|---|
カートASP | 機能一式をレンタルする、最も手軽な方法。 | 低コスト、専門知識不要、迅速な開店が可能。 | カスタマイズ性が低い、手数料がかかる。 | 初期:0円~月額:0円~ | 初心者、個人事業主、小~中規模事業者。 |
パッケージ | ソフトウェアを購入し、自社で構築・運用する方法。 | 高いカスタマイズ性、ブランド表現の自由度、外部連携。 | 初期費用が高額、専門知識が必須。 | 初期:500万円月額:10万円~ | 中~大規模事業者、ブランディング重視。 |
オープンソース | 無償公開のソースコードを元に、自由に構築する方法。 ※開発は専門家への依頼が必須。 | ライセンス料無料、究極のカスタマイズ性、ベンダー非依存。 | 高度な専門知識が必須、完全な自己責任での運用。 | 初期:(開発費込み目安)50万円 ~月額:数万円~ | 社内に開発チームを持つ事業者。 |
クラウド型EC | ASPの手軽さとパッケージの拡張性を両立した方法。 | サーバー管理不要、自動更新、API連携による高い拡張性。 | 月額費用が比較的高め、カスタマイズに一部制限。 | 初期:数十万円月額:数千円~ | 中規模事業者、システム連携を重視する企業。 |
フルスクラッチ | ゼロから完全にオリジナルのサイトを開発する方法。 | ビジネスモデルと完全に一体化したシステムの構築が可能。 | 莫大な費用と時間、高度な開発体制が必須。 | 初期:数千万円月額:数十万円~ | 大企業、独自の要件を持つ事業者。 |
モール型 | 既存の巨大ショッピングモールに出店する方法。 | モールの強力な集客力を活用できる、集客の手間が少ない。 | 価格競争が激しい、ブランド構築が困難、手数料が高い。 | モールによる | EC事業の初心者、新たな販路を求める事業者。 |
目次
ECサイトの構築方法①:カートASP
ECサイトの構築で最も手軽な方法がカートASPです。インターネット経由で機能一式をレンタルするサービスで、サーバー契約や専門知識は不要。初心者でも簡単にECサイトを構築できます。
メリット
ASPカートには、主に3つのメリットがあります。
1つ目は、圧倒的なスピードの速さと低リスクで事業を検証できることです。多くのサービスは初期費用が無料で月額費用も安価なため、最小限の費用で、かつ数日~で市場に出してテストできます。
2つ目は、リソースを本業に集中できる運用効率の良さです。サーバー管理やセキュリティ対策といった専門分野はサービス提供会社が日々アップデートしながら対応しているため、事業者は商品開発やマーケティングといった、売上に直結するコア業務に自身の時間と労力を集中させられます。
3つ目は、専門家レベルの決済・セキュリティ環境が初めから用意されていることです。これにより面倒な契約手続きなしに、開設初日から信頼性の高い環境で販売を始めることが可能になります。
デメリット
手軽な一方で、カートASPでのECサイト構築にはいくつかのデメリットも存在します。
1つ目は、デザインや機能のカスタマイズ性が低いことです。提供されているテンプレートの範囲内でのデザイン変更が基本となり、他社と似たような印象のサイトになりがちです。独自のブランドイメージを細部まで表現したい場合には、物足りなさを感じることもあります。有料カートASPや、コード編集機能・カート埋め込み機能があるサービスであれば、比較的自由度が高いため、なるべくデザインや機能のカスタマイズ性を持たせたい場合は、有料カートASPを検討するのがおすすめです。ツール選定の際、「ECサイトでどのような販売や運用を行いたいか?そのために必要な機能や設定は?」のような要件定義をしっかりと行うと良いでしょう。
2つ目は、売上規模に比例して手数料の負担が重くなることです。無料カートASPの場合、月額費用は安価でも、売上に応じて販売手数料や決済手数料が比例して増える仕組みが多く、売上規模が大きくなるほど手数料負担が重くなります。将来的に売上が拡大する場合は、利益を圧迫しやすいため注意が必要です。
一方、有料カートASPでは販売手数料が発生せず、負担は基本的に決済手数料のみのケースが多いため、一定以上の売上を見込む場合はこちらの方がコスト面で有利になることもあります。
3つ目は、外部システムとの連携に制限があることです。たとえば、独自の在庫管理システムや会計ソフトとの高度な連携には対応できない場合もあるため、業務効率化が必要になった際に課題となる可能性があります。
ただし、有料カートASPの場合はサードパーティー製のツールであれば連携できるシステムも幅広いため、不便に感じることは少ないでしょう。
自社で独自開発しているシステムがあるかどうかで検討するのがおすすめです。
どのような人におすすめ?
以下の項目に当てはまる方には、カートASPによるECサイト構築がおすすめです。
・はじめてネットショップを作る企業
・パソコンやプログラミングに詳しくない企業
・個人、小規模で販売を始めたい企業
・初期費用をかけたくない企業
・とにかく早くネット販売を始めたい企業
・シンプルなショップ運営で十分な企業
構築費用の目安
カートASPでのECサイト構築にかかる費用は、他の方法と比較して非常にリーズナブルです。
・初期費用:0円〜100,000円
・月額費用:0円〜数万円
・販売手数料:売上の0〜5%
・決済手数料:3.6〜6.6%
代表的なASPカート
数あるASPカートの中から、とくにおすすめのツールを3つ紹介します。
イージーマイショップ(easy my shop)

引用元:https://www.easy-myshop.jp/
初期費用 | 無料プラン:0円/有料プラン:3,300円 |
月額費用 | 無料プラン:0円/有料プラン:3,900円~ |
販売・決済手数料 | 無料プラン:5%+40円~/件/有料プラン:3.57% |
無料お試し期間 | 60日間 |
使いやすさ | 管理画面は直感的で分かりやすい。 初心者でも安心して操作できる。 |
拡張性 | 上位プランへ移行することで、より高度な機能が利用可能 |
機能の豊富さ | 予約販売や定期購入、デジタルコンテンツ販売など多様な販売形態に対応 |
イージーマイショップは、機能の豊富さとカスタマイズ性のバランスに優れた国産のASPカート。無料プランから本格的なプランまで用意されており、事業の成長に合わせて柔軟に対応できるECサイト構築が可能です。
最大の特徴は、オーダーメイド・カスタムオーダー機能。名入れ機能やPCのBTO販売・インテリアの数値指定販売・複数オプションの掛け合わせ設定・購入者によるファイルアップロードでの注文など顧客の細かい要望に応える設定が可能で、競合との差別化やファン化に絶大な効果を発揮します。
また、特定の会員だけに商品を公開したり、会員ランクごとに価格を変更したりできる会員/クローズドショップ機能も強力で、BtoB取引やリピーター向けの優良顧客戦略に活用できます。
BASE

初期費用 | 0円 |
月額費用 | スタンダードプラン:0円/グロースプラン:16,580円 |
販売・決済手数料 | スタンダードプラン:売上に対し一律6.6%+40円/ グロースプラン:2.9% |
使いやすさ | 非常にシンプルで直感的な操作性が魅力 |
拡張性 | 「BASE Apps」という拡張機能で、機能を追加することが可能 |
機能の豊富さ | 基本的な機能は揃っているが、より複雑な要件には不向き |
「お母さんも使える」をコンセプトに、誰でも簡単にネットショップが作成できることで人気のASPカートです。とくに、個人のクリエイターや小規模な事業者からの支持が厚く、手軽にECサイトを立ち上げたい方に適しています。
デザインテンプレートが豊富で、スマートフォンアプリからでもショップの管理が可能。Tシャツやスマホケースなどを、在庫リスクなしで作成・販売できるオンデマンド製造サービスとの連携も魅力です。
Shopify

引用元:https://www.shopify.com/jp
初期費用 | 0円 |
月額費用 | ベーシックプラン:約3,650円〜(月額 $29〜)/グロウプラン:約10,100円~(月額 $79〜)/アドバンスプラン:約44,000円~(月額 $299〜) (為替レートにより変動) |
販売・決済手数料 | 国内発行カードの場合3.25%〜3.4%程度 ※プランと利用する決済サービスによる |
無料お試し期間 | 3日間(その後、各プラン月額1ドルで3ヶ月間利用可能) |
使いやすさ | 多機能なぶん、初心者には学習が必要な場合がある |
拡張性 | 連携アプリの豊富さにより、機能の拡張性は非常に高い |
機能の豊富さ | 在庫管理やマーケティング、分析ツールなど、大規模なEC運営にも耐えうる機能が揃っている |
カナダ発の世界No.1シェアを誇るASPカートです。デザイン性の高いテンプレートと豊富なアプリによる高い拡張性が特徴で、国内だけでなく海外への販売も視野に入れたECサイト構築に強みを発揮します。
100種類以上のデザインテンプレートと8,000を超える連携アプリ(Shopify App)により、ASPでありながら高いカスタマイズ性を実現します。
多言語・多通貨に対応しており、本格的な越境ECサイトの構築が可能です。
ECサイトの構築方法②:パッケージ
ECサイトの機能一式が揃ったソフトウェア製品を購入し、自社サーバーにインストールして構築する方法です。ASPより自由度が高く、独自性を重視する中〜大規模なサイトで採用されます。
メリット
パッケージを利用したECサイト構築には以下の3つのメリットがあります。
1つ目は、ブランドの世界観を具現化する高いデザイン性。ソースコードを直接編集できるため、テンプレートに縛られない自由なデザインを追求し、競合他社とは一線を画すような独自の世界感を作り込むこともできます。
2つ目は、業務プロセス全体を最適化できることです。自社で利用している基幹システムとECサイトをAPI連携させることで、手作業によるデータ入力をなくし、より効率的な業務体制を構築していくことも可能です。
3つ目は、事業成長に合わせた高い拡張性です。将来のアクセス増加に応じてサーバー増強や機能追加を柔軟に行えるため、長期的な事業計画に基づいたサイト運営も可能になります。
デメリット
一方、パッケージでのECサイト構築にはいくつかのデメリットも存在します。
まず、ソフトウェアのライセンス費用や開発人件費により、初期費用が高額になる点が最大のデメリットです。これには明確な回収計画が求められます。
また、サーバー構築やカスタマイズには、高度な専門知識とプロジェクト管理能力が不可欠です。社内に専門チームがいない場合は、信頼できる開発会社を選定しましょう。
システムのアップデートやセキュリティ対策や、障害対応といった継続的な運用・保守体制も自社の責任で構築・維持する必要があり、それに伴うコストが継続的に発生します。
どのような人におすすめ?
以下の項目に当てはまる方には、パッケージによるECサイト構築がおすすめです。
・独自のデザイン・機能を実現したい企業
・中〜大規模で本格的にECを運営したい企業
・ブランディングを重視する事業者
・社内にエンジニアがいる、または潤沢な外注予算がある企業
・将来的な事業規模の拡張を見据えている企業
構築費用の目安
パッケージでのECサイト構築にかかる費用は開発規模により大きく変動しますが、一般的な目安は以下の通りです。
・初期費用:500万円〜数千万円
・月額費用:10万円〜数十万円
・販売手数料:なし
・決済手数料:3〜5%
代表的なECパッケージ
ここでは、中〜大規模向けの代表的なECパッケージを3つ紹介します。自社の要件と照らし合わせながら最適な製品を選んでください。
ecbeing

初期費用 | 要問い合わせ(数百万円〜が目安) ※カスタマイズ範囲に応じて個別見積もり |
月額費用 | 要問い合わせ(サーバー費用・保守費用) ※運用体制に応じて変動 |
販売・決済手数料 | なし(別途、決済代行会社との契約が必要) |
使いやすさ | 日本の商習慣に合わせて作られている多機能な管理画面 導入後のサポートが手厚い |
拡張性 | 非常に高い 基幹システム連携やOMO施策など、複雑な要件にも柔軟なカスタマイズで対応可能 |
機能の豊富さ | 顧客管理や在庫管理、販促機能など大規模ECに必要な機能が高いレベルで実装されている |
1,600サイト以上の導入実績を誇る国内トップクラスのECパッケージ。とくにアパレルや食品、化粧品など中堅〜大企業の導入実績が豊富で、安定したサイト運用と長年のノウハウに裏打ちされた手厚いマーケティング支援に定評があります。
950以上の標準機能を持ち、業種特化のオプションも多数。あらゆるEC事業の要件に応える機能を網羅しています。
W2 Unified

引用元:https://www.w2solution.co.jp/
初期費用 | 要問い合わせ(数百万円〜が目安) ※個別見積もり |
月額費用 | 要問い合わせ ※保守契約の内容によって変動 |
販売・決済手数料 | なし(別途、決済代行会社との契約が必要) |
使いやすさ | 多機能で使いやすい 売上向上に直結する分析機能や販促機能が設計されている |
拡張性 | 高い APIを通じた外部システム連携も可能で、独自のビジネスモデルに対応 |
機能の豊富さ | フロント機能からバックオフィス業務までを一気通貫で管理できる とくにCRM関連機能が充実している |
定期購入やD2Cに強みをもつオールインワン型のECパッケージです。顧客生涯価値を最大化するためのCRM機能やマーケティング機能が非常に充実しており、顧客と長期的な関係を築きたいビジネスモデルに最適です。
900以上の標準機能を搭載。とくに顧客管理やステップメール、分析機能の豊富さは業界トップクラスです。
Magento

引用元:https://business.adobe.com/products/magento/magento-commerce.html
初期費用 | 要問い合わせ(有償版の場合、ライセンス費用と開発費で数千万円規模になることもある) |
月額費用 | 有償版の場合は要問い合わせ ※事業規模や流通総額に応じて変動 |
販売・決済手数料 | なし(別途、決済代行会社との契約が必要) |
使いやすさ | 非常に高機能で複雑なため、専門の開発パートナーの支援が不可欠 運用にも専門知識が求められる |
拡張性 | あらゆる要件に対応できる究極の柔軟性 マーケットプレイスには多数の拡張機能がある |
機能の豊富さ | BtoB機能や高度なパーソナライゼーションなど、エンタープライズレベルの機能が豊富 |
Adobe社が提供する世界的に人気の高いECパッケージ。無償のオープンソース版と、より高機能な有償版(Adobe Commerce)があります。非常に高い柔軟性と拡張性を持ち、とくにグローバル展開を視野に入れた大規模サイト構築に最適です。
多言語や多通貨、複数サイト管理など、グローバルなEC運営に必要な機能が標準で備わっています。
ECサイトの構築方法③:オープンソース
ソースコードが無償で公開されているソフトウェアを使い、自由にECサイトを構築する方法です。ライセンス費用は無料ですが、構築から運用、セキュリティ対策まですべて自己責任となります。
メリット
オープンソースのメリットは、大きく3つあります。
1つ目は、圧倒的なカスタマイズの自由度。ソースコードを直接編集できるため、パッケージ以上に制約のない、完全に自由なデザインと機能の実装が可能です。
2つ目は、ライセンス費用ゼロによるコスト構造の柔軟性です。ソフトウェア自体が無料であるため、初期投資を開発人件費に集中させ、ランニングコストを自社でコントロールしやすくなります。
3つ目は、ベンダーに依存しない永続性と独立性です。特定の企業に縛られることがないため、ビジネスの状況に合わせて開発パートナーを自由に変更したり、将来的に開発を完全に内製化したりできます。
デメリット
一方、オープンソースでのECサイト構築にはいくつかのデメリットも存在します。
まず、サイト構築からサーバー管理、セキュリティまで、Web開発全般にわたる高度な技術力と開発リソースが必須となります。
オープンソースの脆弱性を狙ったサイバー攻撃は常に存在するため、セキュリティに対する全責任を自社で負わなければならず、万が一の事故の際のリスクは計り知れません。
さらに、システム不具合が発生した際のトラブル対応力も求められます。原因特定から修正まで自力で行う必要があり、迅速に対応できなければ、売上機会の損失や信用の低下に直結します。
どのような人におすすめ?
オープンソースによるECサイト構築は、誰にでも推奨できる方法ではありません。以下のような技術力や体制をもつ企業・個人に適しています。
・開発スキルがある、または自社に開発チームがいる企業
・コストを抑えつつ、完全にオリジナルのECサイトを構築したい人
・中〜大規模で本格的に運営したい事業者
・特定のベンダーに縛られず、自由にECサイトを運営・改修したい企業
構築費用の目安
ライセンス費用は無料ですが、開発やインフラにかかる費用を考慮する必要があります。
・初期費用:50万円〜500万円
・月額費用:数万円〜数十万円
・販売手数料:なし
・決済手数料:3〜5%
代表的なECオープンソース
代表的なECオープンソースを3つ紹介します。それぞれに特徴があるため、プロジェクトの要件に合わせて選びましょう。
EC-CUBE

初期費用 | 0円 ※別途、サーバー代や開発費が必要 |
月額費用 | 0円 ※別途、サーバー代や保守費が必要 |
販売・決済手数料 | なし(別途、決済代行会社との契約が必要) |
使いやすさ | 非エンジニアには構築・運用が難しい 開発者にとっては情報が多く扱いやすい |
拡張性 | 非常に高い 独自のカスタマイズで自由に機能を拡張できる |
機能の豊富さ | 基本的なEC機能は網羅している プラグインで機能を追加することで多様な販売形態に対応 |
株式会社イーシーキューブが開発・提供する、日本国内でNo.1のシェアを誇るECオープンソースです。国産であるため日本の商習慣に合った機能が標準で備わっており、日本語の情報や開発パートナーが豊富な点が最大の魅力。
350種類以上の公式プラグインで機能追加が容易。情報量の多さと開発のしやすさで、国内でのカスタマイズ案件に強いのが特徴です。
Zen Cart

初期費用 | 0円 ※別途、サーバー代や開発費が必要 |
月額費用 | 0円 ※別途、サーバー代や保守費が必要 |
販売・決済手数料 | なし(別途、決済代行会社との契約が必要) |
使いやすさ | 構築には専門知識が必須 海外製のため、日本語の情報はEC-CUBEに比べて少ない傾向 |
拡張性 | 高い 多くの有志によって開発されたテンプレートや拡張機能が存在する |
機能の豊富さ | 越境ECに必要な基本機能が標準で搭載されている点が強み |
世界中で利用されている歴史の長いECオープンソースで、とくに越境EC向けの機能が充実。多言語・多通貨対応のサイトを低コストで構築したい場合に適しており、海外販売を視野に入れたサイト構築に向いています。
割引設定やクーポン機能など、マーケティング関連の機能が標準で充実しているのが特徴です。
Welcart

初期費用 | 0円 ※別途、サーバー代や開発費、有料テーマ・プラグイン代がかかる場合がある |
月額費用 | 0円 ※別途、サーバー代や保守費が必要 |
販売・決済手数料 | なし(別途、決済代行会社との契約が必要) |
使いやすさ | WordPressの操作に慣れている人であれば、比較的導入のハードルは低い 本格的な設定には専門知識が必要 |
拡張性 | WordPressのエコシステム全体を活用できるため、拡張の可能性は非常に広い |
機能の豊富さ | 基本的なカート機能に加え、定期購入やデジタルコンテンツ販売に対応した有料の拡張プラグインも用意されている |
世界で最も利用されているCMSであるWordPressに、EC機能を追加するプラグイン形式のオープンソースです。すでにWordPressで構築されたウェブサイトやブログに、手軽にショッピングカート機能を追加したい場合に最適な選択肢となります。
WordPressの豊富なテーマやプラグインと組み合わせることで、非常に柔軟なサイト構築が可能。コンテンツマーケティングとの連携に強いのが特徴です。
ECサイトの構築方法④:クラウド型EC・SaaS型
インターネット上のECシステムをサービスとして利用する方法です。ASPの手軽さとパッケージの拡張性を両立させた現代的な手法で、中〜大規模事業者に向いています。
メリット
クラウド型EC(SaaS型EC)を利用したECサイト構築には以下のメリットがあります。
1つ目は、インフラ管理からの解放です。サーバーの構築や保守、セキュリティ対策といった面倒な業務はすべてサービス提供元が行うため、貴重なリソースを商品開発やマーケティングに振り向けられます。
2つ目は、迅速な導入と市場投入です。パッケージ等に比べて開発工程が大幅に少ないため、契約からサイト公開までの期間を大きく短縮できます。
3つ目は、APIによる柔軟なシステム連携です。多くのサービスが提供するAPIを活用することで、自社の基幹システムとの連携や高度なデータ活用、業務の自動化が可能になります。ASPには連携機能が無いものもあるため、自社のEC運用に必要な機能を事前に精査し、どの構築ツールを利用するかを選ぶと良いでしょう。
デメリット
一方、クラウド型EC(SaaS型EC)でのECサイト構築にはいくつかのデメリットも存在します。
まず、高機能で手厚いサポートが受けられる反面、ASPと比較して月額のランニングコストが比較的高額になる傾向がある点です。
これは売上規模に関わらず発生する固定費のため、事業計画において十分に考慮する必要があります。システムの根幹部分やデザインの細部については、プラットフォームが定める仕様の範囲内でのカスタマイズの制限があり、100%の自由度はありません。
そして、システムの安定性や将来の機能拡張などをサービス提供元に依存する形になるため、サービス終了や大幅な料金改定などのリスクも考慮に入れるべきでしょう。
どのような人におすすめ?
クラウド型ECは、次のようなニーズをもつ企業におすすめです。
・システム管理の手間をかけずに、本格的なECサイトを構築・運営したい企業
・中〜大規模のECサイトを迅速に立ち上げたい企業
・定期購入やBtoB、OMOなど、高度な販売モデルを実装したい企業
・APIを利用して外部システムと柔軟に連携したい企業
・手厚いサポート体制を重視する法人
構築費用の目安
サービスのプランやカスタマイズの範囲によって費用は異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
・初期費用:数十万円〜300万円以上
・月額費用:数千円〜数十万円
・販売手数料:なし
・決済手数料:3〜5%
代表的なクラウド型EC・SaaS型
ここでは、高機能で拡張性の高い、代表的なクラウド型ECプラットフォームを3つ紹介します。
ebisumart

初期費用 | 要問い合わせ ※カスタマイズ内容に応じて個別見積もり |
月額費用 | 要問い合わせ ※利用機能やサポート内容に応じて変動 |
販売・決済手数料 | なし(別途、決済代行会社との契約が必要) |
使いやすさ | 導入企業ごとに専任のサポート担当者がつくなど、手厚いサポート体制が魅力 |
拡張性 | API連携が豊富で、外部システムとの連携や独自のカスタマイズに柔軟に対応可能 |
機能の豊富さ | SaaSのメリットとパッケージのメリットを両立させた、高機能なプラットフォーム |
SaaS型でありながらパッケージのように柔軟なカスタマイズが可能な「カスタマイズ型SaaS」のECプラットフォームです。週1回の無料アップデートで、常に最新・安全な環境でECサイトを運営できるのが大きなメリット。
BtoB-ECやOMOなど複雑な要件に対応できる機能が充実しており、外部システムとの連携実績も豊富です。
メルカート

初期費用 | 要問い合わせ ※プランによって異なる |
月額費用 | 要問い合わせ ※プランやサポート内容によって変動 |
販売・決済手数料 | なし(別途、決済代行会社との契約が必要) |
使いやすさ | 分かりやすい管理画面と、伴走型のサポート 初心者でも安心して本格的なEC運営が可能 |
拡張性 | 将来的に「ecbeing」へ同じデザイン・データで移行できるプランもあり、事業拡大にスムーズに対応できる |
機能の豊富さ | 売上向上につながる豊富な販促機能や、分析機能が標準で搭載されている |
ECパッケージ大手の「ecbeing」が提供するクラウド型ECプラットフォーム。ecbeingが長年培ってきたノウハウや機能を、より手軽なコストで利用できるのが魅力で、とくに年商1億円未満の事業者からのステップアップに適しています。
ecbeingのノウハウが詰まった使いやすい管理画面と、事業フェーズに合わせた手厚いサポートが特徴です。
ecforce

初期費用 | 要問い合わせ ※個別見積もり |
月額費用 | 要問い合わせ ※利用機能や流通額に応じて変動 |
販売・決済手数料 | 要問い合わせ |
使いやすさ | 広告効果の分析や顧客分析など、マーケターが使いやすいように設計された管理画面が特徴 |
拡張性 | APIが公開されており、外部ツールとの連携も柔軟 |
機能の豊富さ | 売上向上に直結するマーケティング機能が充実 |
D2Cや定期通販の領域で急速にシェアを伸ばしているプラットフォーム。コンバージョン率や顧客生涯価値を最大化するためのマーケティング機能に特化しており、広告効果を最大化したい企業に最適です。
フォーム一体型LPやアップセル・クロスセル機能など、顧客単価と継続率を高めるための機能が豊富に揃っています。
ECサイトの構築方法⑤:フルスクラッチ
既存のサービスを一切使わず、ゼロから完全にオリジナルのECサイトを構築する方法です。他の方法では実現不可能な要件がある場合やEC自体をコア事業としたい大企業向けの、最もハイレベルな手法です。
メリット
フルスクラッチを選択するメリットは、ビジネスモデルと完全に一体化したシステムを構築できる点にあります。自社の独自の業務フローに合わせて、機能やデザインを1から設計することで、他社には決して模倣できない独自性を確立できます。
また、自社の要件に合わせて、インフラからアプリケーションまでを完全にコントロールできるため、究極のパフォーマンスとセキュリティを追求することも可能です。
デメリット
フルスクラッチでのECサイト構築は、開発に数千万円以上の費用と1年以上の期間が必要になることも珍しくなく、明確な投資対効果が求められる極めて重大な経営判断となります。
また、プロジェクトを成功に導くためには、優秀なエンジニアやプロジェクトマネージャーなどからなる高度な専門人材と組織体制が不可欠です。開発後もシステムを維持・発展させていくための組織文化も求められます。
どのような人におすすめ?
フルスクラッチは、ごく限られた、明確な目的をもつ企業にのみ適した方法です。
・既存のどのサービスでも実現できない、独自の機能やビジネスモデルをもつ企業
・年商数十億円以上の、大規模なECサイトを本格的に運営したい事業者
・社内に優秀な開発チームを抱えている、または潤沢な開発予算を確保できる企業
・将来的にECプラットフォーム自体を自社のコア事業として展開したい企業
構築費用の目安
費用は青天井ですが、一般的な最低ラインの目安として参考にしてください。
・初期費用:数千万円〜数億円
・月額費用:数十万円〜数百万円
・販売手数料:なし
・決済手数料:3〜5%
番外編:モール型
Amazonや楽天市場のような巨大なオンラインのショッピングモールに「出店」する方法です。自社で集客するのではなく、モール自体の強力な集客力を活用できるのが最大のメリットです。
楽天市場

引用元:https://www.rakuten.co.jp/ec/
楽天グループが運営する国内最大級のECモールです。1億以上の楽天会員と「楽天ポイント」による強力な販促・送客の仕組みが最大の魅力です。
特長
出店者が「自分のお店」を築き上げ、顧客との関係を育むことを主眼に置いた「テナント型」の巨大な電子商店街である点です。
Amazonが商品を主役とする巨大倉庫であるのに対し、楽天は「店舗」そのものが主役です。そのため、各店舗のデザインやブランディングにおける自由度が高く、メルマガなどを通じて顧客と直接的な関係を構築することが奨励されています。
この思想を支えるのが、楽天ポイントという強力な顧客ロイヤリティプログラムと、「楽天スーパーSALE」に代表される大規模な販促イベントです。これらはすべて、出店者が独自のブランド力でファンを獲得し、楽天経済圏の中で成長していくための強力な武器となります。
出店条件
楽天市場への出店条件はモール全体の品質と信頼性を維持するため、厳格に設定されています。出店資格は法人または開業届を提出済みの個人事業主のみに限定され、事業としての安定性と信頼性が厳しく問われます。
出店審査では、登記簿謄本や住民票といった公的書類の提出が必須であり、申込情報と各書類の情報が完全に一致していることが極めて重要です。さらに、古物商や酒類販売など、扱う商材に応じた営業許可証の写しも求められます。
開店前には、店舗が楽天の運営ガイドラインに準拠しているかの最終審査に加え、運営責任者が「店舗運営ルール検定試験」に合格する必要があるなど、かなり厳しく審査されています。
費用・手数料
楽天市場の出店にかかる費用は、プランや売上規模、利用するサービスによって変動します。主な費用は以下の通りです。
初期費用 | 約60,000円(出店契約費など) |
月額費用 | 約19,500円〜100,000円 ※プランにより変動 |
販売手数料 | 約6〜15% ※商品ジャンル・売上により変動 |
決済手数料 | 約3.5〜4.0%(楽天ペイ利用時) |
広告費(任意) | 売上向上のために任意で設定・活用が可能 |
Amazon

引用元:https://sell.amazon.co.jp/
世界最大級のECモール。圧倒的な集客力と信頼性に加え、商品の保管から発送までを代行する「FBA」サービスが大きな特徴です。
特長
個々の「店舗」ではなく、一つひとつの「商品」を主役とし、その販売効率を最大化する「マーケットプレイス型」の巨大な物流エンジンであることです。顧客は「A店から買った」と意識することは稀で、あくまで「Amazonで買った」という体験が中心となります。
この思想を支えるのが、出品者の物流業務を保管から梱包、発送、返品対応まですべて代行する「フルフィルメント by Amazon(FBA)」という世界最高水準の物流サービスです。FBAを利用する商品は自動的に「プライムマーク」が付与され、顧客への迅速な配送が保証されるため、販売において絶大な競争優位性を持ちます。
これにより出品者は価格競争力と物流効率の追求に特化できますが、その代償として店舗の独自性を出すことは難しく、顧客との直接的な関係構築はほぼ不可能です。
出店条件
Amazonへの出店条件は、参入の門戸を広く開けつつ、不正利用を徹底的に排除するための厳格な本人確認を両立させている点に特徴があります。事業規模に応じて月額登録料無料の「小口出品」と高機能な「大口出品」から選択でき、法人だけでなく個人でも出品が可能です。
この低い事業的ハードルが、Amazonの膨大な商品ラインナップを支えています。その一方で、本人確認は厳格です。パスポートまたは運転免許証といった顔写真付きの身分証明書に加え、過去180日以内に発行されたクレジットカード等の取引明細書の提出が必須となります。
さらに、なりすまし防止のため提出書類の原本を提示しながら、ビデオ通話による本人確認が求められる場合もあり、事業形態の審査よりも、出品者個人の信頼性確認に重きが置かれています。
費用・手数料
Amazonには、まとまった数量を販売する事業者向けの「大口出品」と、小規模な方向けの「個人出品(小口出品)」の2つのプランがあり、それぞれ料金体系が異なります。
月額費用(大口出品) | 5,390円(税込) |
販売手数料 | 約8〜15% ※手数料率は販売する商品のカテゴリによって異なる |
FBA手数料 | 商品の配送・保管代行サービスであるFBAを利用する場合には、商品のサイズや重量に応じて別途手数料が発生 |
個人出品(小口出品) | 月額費用は無料 ※商品が1点売れるごとに100円の基本成約料と販売手数料がかかる |
Yahoo!ショッピング

引用元:https://business-ec.yahoo.co.jp/shopping/
初期費用・月額費用・売上ロイヤルティが無料の「トリプル無料」を掲げる大手ECモール。PayPayとの強力な連携も魅力で、固定費をかけずに始めたい事業者に最適です。
特長
Yahoo!ショッピングの最大の特徴は、「初期費用・月額費用無料」という圧倒的な参入障壁の低さです。そして、楽天と同じテナント型でありながら、その運営思想は大きく異なります。
現代のYahoo!ショッピングの戦略的価値は、国内最大のコード決済サービス「PayPay」との深い連携にあります。巨大なPayPay経済圏のユーザーを取り込むための「玄関口」としての役割を担っているのです。
しかし、出店数が約120万と極めて多いため、広告費を投下しなければ商品は膨大なライバルの中に埋もれてしまいます。そのため、成功の鍵は「超PayPay祭」などの販促イベントをいかに戦略的に活用し、広告運用を最適化できるかにかかっています。
出店条件
Yahoo!ショッピングの出店条件は、金銭的なハードルは皆無に近い一方で、提出書類の絶対的な正確性を求める、極めて厳格な事務的審査が特徴です。
出店資格は楽天と同様、法人または開業届を提出済みの個人事業主であることが必須で、個人名義での登録は認められていません。審査で最も重要視されるのは、提出情報と書類間の情報の完全一致です。
会社名や住所、代表者名において、漢字・ひらがな・カタカナ、さらには「丁目・番地・号」の表記揺れといった些細な違いさえも不備と見なされ、審査落ちの原因となります。この厳格さは、自動化された審査システムに依存している可能性を示唆しており、柔軟な対応の余地が少ない、精密な書類準備が出店者には求められます。
費用・手数料
Yahoo!ショッピングは出店時の固定費がかからないのが大きな特徴ですが、商品が売れた際には、売上を向上させるための各種施策に応じた手数料が発生します。
無料の項目
初期費用 | 無料 |
月額利用料 | 無料 |
売上ロイヤルティ | 無料 |
発生する主な費用(販売時)
ストアポイント原資負担 | 1%〜15%(このうち1%は必須負担) |
キャンペーン原資負担 | 1.5%(必須) |
アフィリエイト報酬原資 | 1%〜50%(このうち1%は必須負担) ※アフィリエイト経由で販売された場合のみ発生 |
アフィリエイト手数料 | 上記のアフィリエイト報酬額に対して30%が発生 |
決済手数料 | 利用する決済方法によって手数料が異なる (例:クレジットカード決済の場合は3.24%) |