
「WordPressでECサイトを立ち上げたいけど、何から手をつければいいか分からない…」「プラグインや外部ツールがありすぎて、自分のビジネスに合う方法を見つけるのが難しい」という声をよく聞きます。
WordPressは自由度が高く便利な反面、専門的な知識が必要だったり、セキュリティ対策やアップデートの対応が大変だったりと、運用には少しハードルがあります。とくに顧客情報を扱う場合は注意が必要で、狙われやすいというリスクも…。
「ブログも使いたい」くらいの目的であれば、最初からすべてをWordPressで構築するより、まずはカートASPの機能を組み合わせる形ではじめるのがおすすめ。
基本的には、セキュリティや運用面の安心感から見てもカートASPの利用がベターではありますが、それでも「WordPressでチャレンジしてみたい!」という方に向けて、失敗を防ぐためのポイントや、WordPressを使ったECサイト構築の進め方について、わかりやすく解説します。
目次
WordPress(ワードプレス)でECサイトを作成する方法
WordPressでECサイトを作成する方法は、大きく分けて2つあります。1つ目はWordPressの機能を拡張する「プラグイン」を利用する方法、2つ目はShopifyやBASE、イージーマイショップなどの「外部のECツール」と連携する方法です。
どちらの方法を選ぶかによって、カスタマイズの自由度や構築の手間、費用感が変わってきます。まずはそれぞれの特徴を理解し、ご自身のスキルや目的に合った方法を見つけることが重要です。
WordPressのプラグインを利用する
WordPressでECサイトを作成するうえで最も一般的なのが、WordPressにEC機能を追加する「プラグイン」を導入する方法。これにより、既存のWordPressサイトを本格的なネットショップに変えられます。
ここでは、代表的なECプラグインを3つ紹介します。
WooCommerce

WooCommerce(ウーコマース)は、世界で最も利用されているWordPress専用のECプラグイン。WordPress本体と同じ開発元によって提供されており、WordPressとの親和性が非常に高いのが特徴です。
・無料で高機能:基本機能は無料で利用でき、物販からデジタルコンテンツ販売、サブスクリプション(月額課金)のような会員制販売まで、幅広いビジネスモデルに対応。
・圧倒的な拡張性:有料・無料の拡張機能(アドオン)が豊富に用意されており、必要な機能を後から追加していくことで、自社だけのオリジナルなECサイトを構築できます。
・グローバルスタンダード:世界中で使われているため情報が豊富で、多くの決済代行サービスや外部ツールとの連携実績があります。アップデートが頻繁に行われており、常に最新のECトレンドに対応しています。
Welcart

Welcart(ウェルカート)は日本国内で開発された、日本の商習慣に特化したECプラグインです。海外製のWooCommerceでは設定が複雑になりがちな部分を、シンプルに解決してくれます。
・日本のEC環境に完全対応:消費税の計算(軽減税率対応)や細かな送料設定、代金引換やクール便対応など、日本のネットショップ運営に必要な機能が標準で搭載されています。
・安心の日本語対応:管理画面はすべて日本語で、マニュアルやサポートも日本語で提供されているため、英語が苦手な方でも安心して利用できます。
・豊富な国内決済:日本国内の主要なクレジットカード決済サービスやコンビニ決済、銀行振込など、多様な決済方法に標準で対応している点も大きな魅力です。
WP-OliveCart

引用元:https://www.wp-olivecart.com/
WP-OliveCart(ダブリューピーオリーブカート)も日本製のECプラグインで、とくに「手軽さ」と「シンプルな設定」に定評があります。高機能なWooCommerceやWelcartは、少しハードルが高いと感じる初心者の方におすすめです。
・簡単なカートボタン設置:ショートコードを記事内に貼りつけるだけで、どこにでも「カートボタン」を設置できます。これにより、ブログ記事の文脈に合わせて自然な形で購入を促すことが可能です。
・CSSでの高いデザイン性:カートボタンや商品の種類選択といったパーツのデザインを、CSSで自由にカスタマイズできます。
・便利な販売機能:販売期間を設定して商品の表示・非表示を自動で切り替えたり、商品名や画像、リアルタイムの在庫数を表示させたりと、シンプルながらも運営に便利な機能が揃っています。
外部ECツールと連携して作成する
もう一つの方法は、すでに持っているWordPressサイトに、ShopifyやBASE、イージーマイショップといった外部のECプラットフォームの機能を埋め込む形で連携させるやり方です。
WordPressのコンテンツ発信力を活かしつつ、ECの心臓部であるカートや決済システムは信頼性の高い外部サービスに任せる、いわば「いいとこ取り」の手法と言えます。
有料カートASPには、受注管理や決済、在庫連携、メール配信など、EC運営に必要な機能があらかじめ揃っているため、別途ツールを追加で導入するよりも、結果的に月額使用料が抑えられるケースもあります。
また、無料カートASPと比べても、操作性や機能の充実度で優れていることが多いため、導入するなら安心して使える有料カートASPの方がおすすめです。
イージーマイショップと連携して作成

引用元:https://www.easy-myshop.jp/
イージーマイショップは、WordPressとの連携機能が充実している日本のECカートサービスです。生成される「カートボタン」をWordPressサイトに設置するだけで、手軽に販売を開始できます。
・簡単なボタン設置:管理画面で生成されるHTMLタグまたはJavaScript(カートボタン)を、WordPressの投稿や固定ページに貼りつけるだけで連携が完了します。
・デザインの自由度:カートボタンや商品オプションの表示はCSSで細かくデザインを調整できるため、サイトの雰囲気を損ないません。
・豊富な情報表示:JavaScript形式での埋め込みも可能なため、カートボタンだけでなく、商品名や商品画像、現在の在庫数などをリアルタイムで表示させることが可能です。
Shopifyと連携して作成

引用元:https://www.shopify.com/jp
世界シェアトップクラスのECプラットフォームであるShopifyも、WordPressと連携が可能です。
・Shopify Buy Button:最も手軽な連携方法です。Shopifyで商品登録後、「Buy Button」という販売チャネルを追加すると、WordPressに埋め込むためのコードが生成されます。これをサイトに貼りつけるだけで、訪問者はWordPressを離れることなく商品を購入できます。
・iframe埋め込み:商品ページそのものをiframeで埋め込む方法です。実装は簡単ですが、デザインのカスタマイズ性は低くなります。
・API連携:開発知識が必要な上級者向けの方法ですが、最も柔軟な連携が可能です。商品情報をWordPress側で自由にデザインし、購入処理のみをShopifyのAPI経由で行うといった高度なカスタマイズが実現できます。
BASEと連携して作成

無料でネットショップを開設できることで人気のBASEも、WordPressと連携させることが可能です。
・iframeで埋め込む方法:STORESと同様に、BASEの管理画面から個別の商品ページやショップ全体を埋め込むためのHTMLコードを取得し、WordPressに貼りつける方法です。
・APIを利用する方法:BASEもAPIを公開しているため、開発者がいればよりシームレスな形での連携サイトを構築できます。
・商品ページへのリンク:最もシンプルな方法です。WordPressで商品紹介記事を作成し、購入ボタンとしてBASEの商品ページへのリンクを設置します。厳密な連携ではありませんが、手軽に送客が可能です。
STORESと連携して作成

BASEと並んで人気のSTORESも、簡単な連携機能を備えています。iframeでSTORESの商品ページを埋め込む方法は、STORESの管理画面で商品ごとに「埋め込み」用のHTMLコードが提供されています。
このコードをコピーし、WordPressの記事編集画面にペーストするだけで、簡単に商品情報を表示・販売できるようになるのです。
WordPress(ワードプレス)でECサイトを作るメリット・デメリット
WordPressでECサイトを構築することは多くのメリットがある一方で、知っておくべきデメリットも存在します。
メリット
WordPressでECサイトを構築する最大の魅力は、何よりも「自由度の高さ」に尽きます。
カスタマイズ性が高い
WordPressは、デザインテンプレートである「テーマ」と、機能拡張のための「プラグイン」が世界中で開発されており、その組み合わせは無限大です。ASPカートサービス(Shopify、BASEなど)に比べて制約が少ない場合も多く、「こんなデザインにしたい」「あんな機能が欲しい」という理想を限りなく実現できます。
HTMLやCSSはもちろん、時にはPHPの知識も必要になるものの、スキルさえあれば、細部までこだわり抜いた世界に一つだけのECサイトを構築可能です。
SEO対策に強い
WordPressの最大の強みは、元々がブログシステムであることから、SEO(検索エンジン最適化)に強い点です。商品紹介だけでなく、関連するお役立ち情報や専門的なコラムなどのコンテンツを、同じドメイン内で発信し続けることでサイト全体の評価が高まり、検索エンジンからの流入を増やしやすくなります。
この「コンテンツマーケティング」との親和性の高さは、他のECサービスにはない大きなアドバンテージです。
運用コストが抑えられる
ShopifyやカラーミーショップなどのASPカートは便利な反面、月額利用料や販売手数料が継続的に発生します。一方、WordPress自体はオープンソースで無料のため、基本的なランニングコストはレンタルサーバー代とドメイン代になります。
必要な機能だけをプラグインで追加していく形なので、スモールスタートが可能で、事業規模に応じたコスト管理がしやすい点もメリットです。
さまざまな商品タイプに対応
プラグインを活用することで一般的な物販はもちろん、音楽やイラストなどのデジタルコンテンツ販売や月額課金制のオンラインサロン、学習コンテンツといった会員制販売など、非常に幅広い商品タイプに対応できます。
この柔軟性は、ニッチな商材や複雑な販売形態を考えている場合に大きな強みとなります。
デメリット
自由度の高さは、裏を返せば「自己責任」の範囲が広いことを意味します。WordPressでのECサイト運営には、以下のようなデメリットも考慮する必要があります。
自分で管理が必要
WordPressでサイトを運営する場合、プログラムのアップデートやデータのバックアップ、そして最も重要なセキュリティ対策などをすべて自分で行う必要があります。
とくに、ECサイトは顧客の個人情報や決済情報を扱うため、セキュリティ対策を怠ると情報漏洩などの重大な事故につながるリスクがあります。自分でセキュリティ管理をする自信がない場合は、セキュリティ対策がしっかり整っているカートASPを利用する方が安心です。
最初の構築に知識が必要
サイトの立ち上げには、レンタルサーバーの契約やドメインの取得、WordPressのインストールといった一連の作業が必要です。さらに、WooCommerceなどの高機能なECプラグインは設定項目が多く、初心者にとっては複雑で難解に感じられる部分もあります。
手軽に始められるBASEやSTORESと比較すると、開店までのハードルは高いと言えます。
プラグインの相性に注意が必要
便利なプラグインですが、複数を導入するとプラグイン同士が干渉しあってサイトが正しく表示されなくなったり、特定の機能が動かなくなったりする不具合が発生することがあります。
また、WordPress本体やプラグインのアップデートによって、それまで問題なく動いていた機能が使えなくなるケースもあり、原因の特定と修正に専門的な知識が求められる場面もあります。
決済や配送の設定が面倒なことも
とくに海外製のプラグインを利用する場合、日本の複雑な消費税や地域ごとに異なる送料設定、代引きといった日本独自の商習慣に対応させるための設定が煩雑になることがあります。
日本語に完全対応したプラグインを選ぶか、別途、日本の決済代行サービスと連携させるなどの工夫が必要になる場合があります。
他のECサイト構築サービスとWordPress(ワードプレス)の比較
WordPressでのECサイト構築が最適解とは限りません。世の中にはさまざまなECサイト構築サービスがあり、それぞれに特徴があります。
ここでは、主要なサービスとWordPressを比較し、どのような人にどのサービスが向いているのかを解説していきます。
有名なECサイト構築サービスとの比較表
サービス名 | 初期費用 | 月額費用 | 決済手数料 | カスタマイズ性 | SEO対策 | サポート体制 | 向いている人 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
WordPress | 10,000円~ | 1,000円~ | 3.6%~(カード手数料) | ◎ 非常に高い | ◎ 非常に強い | △ 自己責任 | オリジナルサイトを作りたい人、コンテンツで集客したい人 |
Shopify | 無料 | $33~(日本円目安4,950円~) | 3.4%~ | 〇 高い | 〇 強い | ◎ 充実 | 越境EC、本格的なストアを構築したい人 |
BASE | 無料 | 無料~ | 3.6%+40円~ | △ 限定的 | △ やや弱い | 〇 メール/チャット | 今すぐ無料で始めたい人、小規模事業者 |
イージーマイショップ | 無料 | 無料~ | 無料プラン:5.0%+40円/件 有料プラン:3.57% | 〇 高い(特にオーダーメイド) | 〇 強い | 〇 メール/フォーム | オーダーメイドやセット販売など、多様な販売機能を活用をしたい人、 初めてのネットショップでも操作に迷いにくいサポートを求める人 |
STORES | 無料 | 無料~ | 5.0%~ | △ 限定的 | △ やや弱い | 〇 メール/チャット | デザイン性を重視し、無料で始めたい人 |
カラーミー | 無料~ | 4,950円~ | 4.0%~ | 〇 HTML/CSS可 | 〇 強い | ◎ 電話サポートあり | 中〜大規模のECサイトを目指す事業者、機能の豊富さや拡張性を求める人 |
WordPressでのECサイト構築に向いている人
上記の比較を踏まえると、WordPressでのECサイト構築は以下のような人にとくにおすすめです。
自分でサイトをカスタマイズしたい人
テンプレート通りのデザインではなく、商品やブランドの世界観を細部まで表現したい人。
マーケティング戦略に合わせて、購入までの導線を柔軟に最適化したい人には、WordPressのカスタマイズ性が大きな武器になります。
ある程度のWeb知識がある or 勉強する意欲がある人
HTMLやCSSの基本、場合によってはPHPの知識も必要になります。サーバーやプラグインの設定に抵抗がなく、分からないことがあっても自分で調べて理解していくのが得意な人に向いています。
今は知識がなくても、書籍やWebサイトで学びながら自分の手でサイトを育てていきたいという意欲のある人には、WordPressでのECサイト構築に挑戦する価値が大いにあります。
SEOやコンテンツマーケティングに力を入れたい人
ただ商品を並べるだけでなく、ブログ記事を通じて見込み客を集め、長期的なファンを育てていきたいと考えている人に向いています。
WordPressはHTMLの知識がなくても簡単にブログが書けるため、SEOやコンテンツマーケティングに取り組むハードルが低く、初心者でもはじめやすいのが魅力です。
複雑な商品・サービスを販売したい人
サイズや色などのバリエーションが豊富な商品や、会員限定コンテンツ、定期購入(サブスクリプション)など、ASPカートでは対応が難しい複雑な販売形態を考えている人には、プラグインで柔軟に対応できるWordPressが最適です。
WordPressでのECサイト構築に向いていない人
一方で、以下のような人には、WordPress以外のサービスのほうがストレスなくECサイトを始められる可能性があります。
今すぐ販売を始めたい人
BASEやSTORESがおすすめです。
これらのサービスは、メールアドレスを登録すれば数分でショップが開設でき、スマートフォンアプリからも商品登録や管理が可能です。面倒なサーバー設定やインストール作業は不要で、思い立ったらすぐに販売を開始できます。
ノーコードで完結したい人
Shopify(Buy Button)やBASEがおすすめ。
プログラミングの知識がなくても、ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作でサイトを構築・編集できます。とくに、Shopifyはデザインテンプレートが洗練されており、簡単におしゃれなサイトが作れます。
EC運用や保守に時間をかけたくない人
イージーマイショップやShopifyが最適。
とくにWordPressを使う場合は、セキュリティ対策が欠かせません。対策が充実しているカートASPを選ぶことで、リスクを抑えた運営が可能になります。
たとえば「イージーマイショップ」では、副管理者設定やログインIP制限、SSL通信、脆弱性チェック、指紋認証など、多面的なセキュリティ機能が用意されており、日々の運用にも安心感があります。こうしたセキュリティに強いサービスを活用することで、より安定したサイト運営が目指せます。
WordPress(ワードプレス)でECサイトを作成する場合の費用
WordPressでのECサイト構築は「安い」というイメージがありますが、具体的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか。
ここでは、サイトを立ち上げるための「初期費用」と、運営を続けるための「ランニングコスト」に分けて、リアルな費用感を解説します。
初期費用
WordPressでのECサイト構築の初期費用は、どこまでこだわるかによって大きく変動します。最小構成なら10,000円程度から、本格的なサイトを目指すなら50,000円〜100,000円前後が一つの目安となります。
【初期費用の内訳(目安)】
項目 | 最小構成 (目安) | 本格派(目安) | 備考 |
---|---|---|---|
レンタルサーバー代 | 0円~ | 10,000円~30,000円 | 初期費用無料のプランも多く、月額料金は年間契約の方が割安。 |
ドメイン取得費 | 0円~ | 1円~2,000円 | サーバー契約時の特典で無料になる場合も。 |
WordPressテーマ | 0円 | 10,000円~30,000円 | 有料テーマはデザイン性・機能性・サポートが充実。 |
ECプラグイン | 0円 | 0円~30,000円 | 基本は無料。必要に応じて有料プラグインを追加するケースも。 |
その他プラグイン | 0円 | 0円~10,000円 | セキュリティ対策やバックアップ用の有料プラグインなど。 |
合計 | 約1円~ | 約20,001円~ | 制作会社に依頼する場合は、さらに数十万円~の制作費が必要。 |
ランニングコスト
サイトを運営し続けるためのランニングコストは、主にサーバー代とドメイン代になります。
固定費としては年間15,000円〜20,000円前後を見ておけば十分です。それに加え、商品が売れた際には決済手数料が発生します。
【ランニングコストの内訳(目安)】
項目 | 年間費用の目安 | 備考 |
---|---|---|
レンタルサーバー代 | 12,000円~ | プランによる。月額1,000円前後のプランが主流。 |
ドメイン更新費 | 1,500円~ | .com、.jpなどドメインの種類によって変動。 |
有料テーマ/プラグイン更新費 | 0円~ | 利用している場合のみ発生。年単位でのライセンス更新が必要。 |
合計(固定費) | 約13,500円~(+決済手数料3.6%) | 売上がなければ、この金額でサイトを維持できる。 |
このように、WordPressでのECサイト運営は他のASPカートサービスと比較しても、とくに固定費を低く抑えることが可能です。
売上がない間はコストを最小限にできるため、スモールスタートしたい個人や中小企業にとって、非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。