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社内販売とは?実施形態によるメリット・デメリットと法律税務の注意点

社員のモチベーションや従業員満足度を高めるために福利厚生を充実させたいと考える企業は多いでしょう。中でも近年注目されているのが「社内販売制度」です。自社の商品やサービスを社員向けの割引価格で提供することで、

  • 従業員満足度の向上
  • 在庫の有効活用
  • 商品理解の促進
  • 企業への愛着の醸成

といった効果が期待できます。本記事では、社内販売の概要から、実施形態によるメリット・デメリット、法律・税務・労務上の注意点までわかりやすく解説します。

社内販売とは?

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社内販売とは、企業が自社の商品やサービスを社員やその家族向けに、特別価格や限定条件で提供する仕組みのことです。社内販売は「社販」「社員販売」「社員セール」「ファミリーセール」などとも呼ばれます。

社内販売の対象は、社員だけではありません。企業によっては、社員の家族・OB・一部関係者などに拡大する場合もあります。

社内販売の目的

一般的な企業では、従業員満足度やロイヤリティを高めるために、福利厚生の一環として導入します。社員が自社商品を手頃な価格で購入できれば、生活の充実によって従業員満足度が向上します。

また、社員が商品やサービスを実際に利用することで、商品知識が深まったり、愛着が湧いたりといったことも社内販売の目的の1つです。それにより、実体験に基づいた提案ができるため、営業や広報活動がよりスムーズに行えるでしょう。

そして、過剰在庫やシーズン落ち商品を効率的に消化できることが、社内販売を実施する企業側のメリットです。保管コストの削減やキャッシュフロー改善にも、社内販売は役立ちます。

業種ごとの販売される商品の種類

社内販売で扱われる商品やサービスは、企業の業種によって大きく異なります。

  • メーカー系企業:食品・飲料・化粧品・家電・アパレルなど、自社で製造した商品
  • 流通・小売業:仕入れ商品のアウトレット商品やシーズン落ち商品
  • サービス業:自社サービスの利用券を特別価格で提供。旅行業は旅行券、ホテル業は宿泊券、エンタメ業はイベントチケットなど

このように、一口に社員販売といっても、業種によって扱う商品やサービスは多種多様です。

社内販売のメリット・デメリット・注意点

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企業にとって社内販売は、福利厚生・販売力強化・社内コミュニケーションの促進など、単なる在庫処分以上のメリットがあります。社員にとっては、生活費の軽減や、企業からの優遇を実感できるなどが社員販売のメリットです。

一方で、社内販売には公平性の問題、転売リスク、運営コストといったデメリットや注意点もあります。

メリット

社内販売において会社側と社員側にはそれぞれどのようなメリットがあるのか、以下で詳しく解説します。

会社側のメリット

社内販売の会社側のメリットとして、まず在庫処分の効率化が挙げられます。型落ち商品や余剰在庫を社員向けに販売することで、キャッシュフローの改善が見込めます。

福利厚生の一環として社内販売を行えば「自社商品を安く購入できる」という満足感を与えることが可能です。また、社員に対する感謝の気持ちを示すことにもつながるでしょう。それにより、従業員満足度や仕事に対するモチベーションの向上が期待できます。

そして、社員が自社商品を実際に利用すると、顧客への説明や提案にリアリティが増します。社員による口コミやSNSを通じた拡散効果も望めるでしょう。

また、社内販売イベント自体が社員交流の機会となります。コミュニケーションを促進できる点も社内販売を行うメリットです。

社員側のメリット

社員側の社内販売の大きなメリットは、当然ですが、通常よりも安く購入できることが第一です。また、一般販売前の商品や限定品の購入を可能にすると、社員ならではの優遇という特別感ももってもらいやすいです。

福利厚生の一環として社内販売が利用できれば「自分たちは会社から大切にされている」と感じられるでしょう。それにより、社員であることに対する満足度が高まり、会社に対するロイヤリティが高まります。

社内販売で購入した商品を使って得た知識や体験を、営業や企画などの業務に活かせる点もメリットです。

デメリット・注意点

社内販売には多くのメリットがありますが、実施に伴うデメリットや注意点もあります。まず、社内販売には販売や在庫の管理に伴う運営コストが発生します。

勤務地や勤務形態によって参加機会に差が出るため、社員間の公平性を保つことが難しいです。社員による社内販売で購入した商品の転売が発生すれば、ブランド価値や顧客満足度を損なう恐れがあります。

このようなリスクを最小限に抑えるには、社内販売を行う際は社内規定を明確にすることが大切です。そのうえで、社員にルールを周知し、徹底させる必要があります。

また、過度な割引は市場価格に影響を与える可能性があります。それだけでなく、税務上の問題を引き起こす場合もあるので、割引の設定には注意が必要です。

社内販売の実施形態

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社内販売の実施形態には、おもに対面販売型・オンライン型・イベント型の3種類があります。

実施形態特徴メリットデメリット
対面販売型社内スペースで即売実物確認が可能、交流促進会場準備コスト、参加制限あり
オンライン型社内ECサイトで注文時間や場所を選ばず購入可能、全国対応、公平さが保てるシステム費用、物流手配が必要
イベント型ファミリーセール形式特別感、在庫処分に強い運営負担大、不定期開催、不公平感が出やすい

それぞれの実施形態の特徴・メリット・デメリットについて、以下でわかりやすく解説します。

1. 対面販売型

対面販売型の社内販売は、自社の店舗やオフィス内で社員が直接商品を購入できる形態です。

社員は実物を確認して購入できるため、安心感を持って社内販売を利用できることがメリットです。その場で購入できる手軽さも魅力といえるでしょう。

会場の維持、販売スタッフの確保、在庫管理などの運営コストがかかることがデメリットです。また、勤務場所や勤務形態によって参加できない社員が出るため、不公平感がやや生まれやすいです。

2. オンライン型

オンライン型の社内販売は、社内ECサイトやネットワークを通じて商品を購入できる形態です。

24時間好きなときに好きな場所で購入できる利用のしやすさが魅力です。どのような社員でも参加できるので、不満が生まれにくいこともメリットといえるでしょう。また在庫管理や決済処理をシステム化できることもポイントです。

ただし、オンライン型は社内販売用のシステムの構築や維持にコストがかかります。配送コストが発生し、物流の手配が必要となることにも注意が必要です。

3. イベント型

イベント型の社内販売は、おもに社員やその家族を対象にしたイベントで商品を購入できる形態です。ファミリーセールや感謝祭といった名称で開催され、OBや関係者が参加できる場合もあります。

多くの人が参加できるため、大量の在庫を短期間で処分できることがイベント型の社内販売の大きなメリットです。

イベント型の社内販売は社員にとって特別感があり、満足度も高いです。日時や場所が限定されるので、参加した社員の一体感を強め、モチベーションを高める効果も期待できます。

一方で、会場準備や人員配置など運営負担が大きくなります。また、場所と日時が限られるため、参加できないことに不満を感じる社員が発生する可能性が高いです。

社内販売の法律・税務・労務上の観点

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税務上の扱い

会社が社員に商品やサービスを割引して提供すると、所得税上は課税対象となる給与と見なされる可能性があります。税金がかかってしまうと、福利厚生の一環としての社員販売が、社員の所得を圧迫する場合もあるので注意が必要です。

なお、税法や労働法は個別の事実関係や法改正で変わります。社内販売を行う際は、税理士・社労士・顧問弁護士に確認すると確実です。

税金のルール

税金のルールとして、会社の商品を社員が安く買えると、その安くなった金額は受け取ったことと同じと考えられる場合があります。これを「現物給与」と呼びます。

社員への給与は、金銭で支給されることが一般的です。ただし、以下の物や権利の支給は、経済的な利益であると判断されることがあります。

(1) 物品その他の資産を無償または低い価額により譲渡したことによる経済的利益
(2) 土地、家屋、金銭その他の資産を無償または低い対価により貸し付けたことによる経済的利益
(3) 福利厚生施設の利用など(2)以外の用役を無償または低い対価により提供したことによる経済的利益
(4) 個人的債務を免除または負担したことによる経済的利益

引用元:No.2508 給与所得となるもの|国税庁

社内販売で過度な割引を行うと1の現物給与に該当すると見なされる可能性があります。

税金がかからないための条件

社内販売の割引が給与として課税されないためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  • 価格設定:販売価格が「仕入れ値以上」であり、かつ「通常の販売価格の70%以上」であること。
  • 公平な割引率: 割引率が全社員に一律である、もしくは勤続年数などの合理的な基準で設定されていること。
  • 適正な数量:社員が個人や家族で消費する範囲内の数量であること。

(1) 値引販売に係る価額が、使用者の取得価額以上であり、かつ、通常他に販売する価額に比し著しく低い価額(通常他に販売する価額のおおむね70%未満)でないこと。
(2) 値引率が、役員若しくは使用人の全部につき一律に、又はこれらの者の地位、勤続年数等に応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差を設けて定められていること。
(3) 値引販売をする商品等の数量は、一般の消費者が自己の家事のために通常消費すると認められる程度のものであること。

引用元:〔給与等に係る経済的利益〕|国税庁

簡単にいうと、仕入れ値以上かつ、通常の売価の70%以上の価格であること購入する量が家庭で使う範囲に収まっていること割引が社員全員に同じように行われていることが大切です。役職や勤続年数を加味したある程度の割引の差は問題ありません。

福利厚生の取り扱い

割引だけでなく、社内食堂やまかないを安く食べられることも、経済的な利益と判断されることがあります。福利厚生の一環としてみなされ、非課税と扱われるための要件は以下のとおりです。

(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)

引用元:No.2594 食事を支給したとき|国税庁

例えば、1回のランチ代が600円、会社が200円、社員が400円を負担し、一ヶ月の会社負担の合計金額が3,500円以下であれば問題ありません。

労務・法務上の配慮点

社内販売を行う際は、公平性を保ち、不正を防ぐために労務や法務上の配慮も必要です。公平性を保つことで、福利厚生の一環としての社内販売によって得られるメリットを最大化できます。

また、監査の設置やルールの整備によって、転売や不正によるブランド価値の低下を始めとした会社への損害リスクを最小限に抑えられます。

公平性

社内販売の対象を正社員のみとして、アルバイト・パート・派遣を対象外とすると問題になる恐れがあります。まず、公平性が保たれていないことで、正社員以外から不満を持たれる可能性が高いです。

また、厚生労働省が推奨する同一労働同一賃金の考え方に反する恐れがあります。同一労働同一賃金は、ざっくりというと「同じ仕事なら同じ待遇を」という考え方です。違反による直接的な罰則はありませんが、民事起訴や行政指導・勧告の対象となる恐れがあります。

参考:同一労働同一賃金特集ページ |厚生労働省

不正防止措置

社内販売は転売や不正が発生しやすいというリスクがあるため、不正防止措置が不可欠です。

社内販売に関する在庫管理、購入上限の設定、購入履歴の記録、承認ルートの設計、定期的な監査など、内部統制の整備が重要です。

社内販売の担当者が、在庫や受注の裁量を一手に担うような運用は避けましょう。職務分離によって複数の担当者に業務を分散し、相互チェックが機能する環境を作ることが不正防止の基本的な対策です。

社内販売ECサイトについて

引用元:https://pixabay.com/illustrations/e-commerce-shopping-basket-shopping-402822/

社内販売のECサイトとは?

社内販売のECサイトとは、社員や関係者だけが利用できる「会員制のネットショップ」です。基本的な仕組みは楽天やAmazonといった代表的なECサイトと同じです。ただし、社内販売のECサイトにアクセスできるのは、社員や関係者に限られるという違いがあります。

導入するメリットとして、場所や時間を問わず社内販売が利用できることが挙げられます。社員に対して、福利厚生の一環としての社内販売の価値を平等な提供が可能です。

また、社内販売のECサイトの導入は余剰在庫の処分や社員のモチベーションの向上といった経営面へのプラスの効果も期待できます。

社内販売ECサイトの特徴

社内販売ECサイトの特徴は、前述のとおり社員や関係者だけがログインできる限定ECサイトであることです。ログインIDやパスワードの設定はもちろん、社員番号の入力やネットワークの制限があるなど通常よりも複雑な利用条件を設けることが一般的です。

社内販売のECサイトでは、おもに自社商品、型落ち商品、余剰在庫のある商品を割引価格で購入できます。税務基準となる通常価格の70%以上に抑えるなど、割引率の設定には注意が必要です。

社内販売のECサイトの決済方法は、クレジットカードや給与天引きなどがおもに選択できます。また、配送先はオフィスや自宅などを指定できます。

ECサイトによって在庫・注文・決済をシステムで一元管理できるため、社内販売の効率的な運営が実現可能です。

全国に拠点がある企業や在宅勤務が多い企業の社員でも公平に利用できる仕組みなので、福利厚生の拡充や従業員満足度アップにもつながります。

社内販売ECサイトのメリット

社内販売をEC化する最大のメリットは、利用者と管理者の双方に対する利便性の高さです。

社員は、ECサイトを利用していつでもどこからでも商品を注文できます。社内販売が社員に対して定着すれば、商品理解やロイヤリティの向上にもつながるでしょう。

また、企業は社内販売に関してシステム上で一元管理できるため、運営に関するリソースを削減できます。

社内販売ECサイトのデメリット・注意点

社内販売ECサイトの導入のデメリットは、システム開発と運用におけるコストが発生することです。そのため、中小企業にとって社内販売ECサイトの導入はハードルが高いといえるでしょう。

また、ECサイトの性質上、アカウントの不正利用や情報漏洩とセキュリティリスクも避けられません。アクセスの制限とあわせて、顧客情報の管理を徹底することが大切です。

転売目的の大量購入を防ぐためには、購入制限の設定や監視体制の整備が必要です。また、価格設定が適切に行われない場合には、税務上の課題が発生したり、市場価格に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。


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